「不動産を売却すると、税金がかかるってホント?」
本当です、空き家などの不動産を売却するとき、様々な税金がかかります。
また、要件を満たすことで税制の優遇措置(特別控除の特例)を受けることもできます。
それでは、どのような税金がかかり、そのような優遇を受けることができるのでしょうか?
こちらの記事では、税金の種類や節税になる特別控除について解説しました。
この記事を読んでいただくことで、こんなことが分かります。
・不動産を売却すると、「印紙税」「登録免許税」「譲渡所得税」がかかる
・譲渡所得税を節税できる特例があり、最大で600万円の節税効果がある
目次
■空き家などの不動産を売却するときにかかる税金
・印紙税
・登録免許税
・譲渡所得税
■空き家などの不動産を売却したときにかかる税金を節税できる特別控除の特例
・空き家の3,000万円の特別控除の特例とは
・居住用財産の3000万円の特別控除の特例
・所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例とは?
■まとめ
空き家などの不動産を売却するときにかかる税金
空き家などの不動産を売却する際には様々な費用がかかり、税金もかかる費用の中のひとつです。
費用については事前に把握していても、税金について把握し損ねてしまうと、想定外の出費でお金を残すことができなくなってしまいます。
想定外の出費にならないように、空き家を売却するときの知識として事前に確認しましょう。
空き家を売却するときにかかる税金には「売却するときにかかる税金」と「売却が終わった後にかかる税金」があります。
■売却するときにかかる税金
・印紙税
・登録免許税
■売却したあとにかかる税金
・譲渡所得税
印紙税
印紙税は不動産売買契約書に貼付することで納税する税金です。
印紙税額は売買する不動産の価格によって異なります。
軽減措置の特例が適用されており、以下の表の金額分の印紙を貼付して、納税します。
新潟市内の不動産を売却する場合には、契約書に貼る印紙は5,000円か10,000円になることが多いです。
印紙代の負担方法は2つあり、以下のような方法です。
・「買主と売主が半分ずつ負担して、契約書の原本は買主がもち、売主は契約書のコピーをもつ方法」と、
・「買主・売主それぞれが契約書の原本をもつ代わりに、それぞれの印紙代はそれぞれが負担する方法」
例えば1200万円の土地を取引する場合で考えると、売主様も契約書の原本が欲しい場合は、契約書を2通作成し、それぞれに10,000円を貼付、それぞれが10,000円負担することになります。
コピーでも問題ない場合は原本を1通作成し、10,000円の印紙を貼付、5,000円ずつご負担いただくことになります。
また、売主様が事業者(事業として不動産を売却する)場合には買主から受領する売買代金の領収証にも印紙を貼付することになりますが、相続したご実家を売却する場合には領収証に印紙を貼付する必要はありません。
登録免許税
登録免許税は、不動産の登記を申請するときにかかる税金です。
税額は不動産の固定資産税評価額に一定の税率をかけて計算します。
全ての不動産を売却するときに登録免許税がかかるわけでなく、以下のような登記をするときに必要になります。
・氏名・住所変更登記
・抵当権抹消登記
・地目変更登記
・建物の未登記部分の更正登記
共通して言えることは、登記簿の情報と実際の状況に相違がある時に行う手続きであることです。
登記の手続きは本人の代理人として司法書士や土地家屋調査士が行います。
依頼者は司法書士事務所や土地家屋調査士事務所の手数料と一緒に登録免許税を事務所へ支払い、事務所が代理で納付してくれます。
氏名・住所変更登記が必要なケースと相場は?
氏名・住所変更の登記は、転居や結婚などが理由で住所や氏名が登記簿と現在で異なる場合に必要です。
なぜ所有者の氏名や住所を現在の正確なものに変更しなければならないのでしょうか?
簡単に言うと、所有者の本人確認ができないからです。
氏名・住所変更の登記にかかる費用は15,000円前後です。
抵当権抹消登記が必要なケースと相場とは?
不動産に抵当権がついている場合、これを外さないと売ることができません。
抵当権がすでについている不動産では、銀行は買う人にお金を貸してくれないからです。
金融機関は他の抵当権が付いている不動産には担保価値がないと評価し、第一順位の抵当権を設定することを条件にお金を貸し出します。
抵当権を抹消するときにかかる費用は15,000円前後(税別)です。
こちらは1件当たりの金額です。
共有名義でお金を借りている場合は、もう少し高くなります。
また、複数の金融機関から借入がある場合は、×金融機関の数になります。
地目変更の登記が必要なケースと相場は?
実際には宅地として利用されている土地でも、地目が「田」や「用悪水路」のままの土地もあります。
そのような土地の場合は、売買するときに実際の地目である「宅地」へ変更する必要があり、登記の費用がかかります。
地目変更の登記費用の相場は3万円前後で、土地の筆が増えると5,000円前後が加算されます。
建物の未登記部分の更正登記が必要なケースと相場とは?
建物の増改築が原因で、現在の状態と登記した当時の状態に相違がある場合に必要な手続きです。
建物の未登記部分の更正登記の費用は10万円前後(税別)が相場です。
土地家屋調査士による図面の作成・登記の差し替えがあるためか、住所変更よりも割高です。
譲渡所得税
空き家などの不動産を売却したときに、購入した時よりも高い金額で売却できた場合、譲渡所得税という税金の納税が必要になります。
譲渡所得税は所得税と住民税と復興特別所得税を合算したものです。
譲渡所得の計算方法は次の通りです。
譲渡所得(利益) =譲渡価額(売却金額) - 取得費用(購入したときにかかった費用)- 譲渡費用(売却するときにかかった経費) - 特別控除
上記の計算式で計算して、利益が発生したときに利益に対して一定の税率を掛けたものが譲渡所得税です。
取得費用(購入したときにかかった費用)は、購入当時の土地や建物などの不動産の本体価格と、購入時にかかった経費を合計した金額です。
購入時の経費にはどんなものがあるかと言うと・・・、
・購入したときに不動産会社へ支払った仲介手数料
・売買契約書に貼付した収入印紙の費用
・所有権移転を受けたときに支払った登録免許税や司法書士への報酬
・不動産取得税
・引っ越し費用などの雑費
などがあります。
本体価格は購入した当時の領収証や契約書などで金額を確認することができます。
当時の取得費を証明する書類がなく、取得費が分からない場合は売却価格の5%を取得費として算入することができます。
譲渡費用(売るときにかかった経費)は、
・売却したときの仲介手数料
・測量や建物の解体費用
・契約書に貼付した収入印紙の費用
などがあり、購入したときにかかった費用と似たような内容になります。
特別控除は条件を満たすことで利用できる、税金を軽減するような仕組みです。
代表的なものに以下の2つがあります。
・「空き家の3000万円の特別控除の特例」
・「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」
税率は不動産の所有期間で異なります。
相続された不動産の所有期間は相続される前(前の所有者の所有期間)とされた後(現在の所有者の所有期間)の期間を合算して考えます。
また、所有期間は売却する年の1月1日時点の年数で考えます。
所有期間ごとの税率は以下です。
所有期間が5年超の場合は所得税と住民税、震災復興特別税を合わせ20.315%、
所有期間が5年以下の場合は所得税と住民税、震災復興特別税を合わせて39.63%になります。
【まとめ】
・空き家などの不動産を売却するときにかかる税金は「印紙税」「登録免許税」「譲渡所得税」の3つ
・印紙税は契約書に貼付して納税
・登録免許税は登記簿と現在の状況が一致していない場合や抵当権がある場合に負担が必要
・譲渡所得税は買ったときよりも売った時のほうが高く売れたときに負担が必要
空き家などの不動産を売却したときにかかる税金を節税できる特別控除の特例
空き家などの不動産を売却するとき、利用するためには一定の要件がありますが、特別控除の特例を利用できると大幅な節税を受けることができます。
不動産の売却を検討している方は、ぜひこの特例を頭に入れておくことをお勧めします。
特例には大きく2種類があり、
・相続した不動産に利用できる「空き家の3000万円の特別控除の特例」
・もともと居住していた自宅に利用できる「居住用財産の3000万円の特別控除」
があります。
それぞれ利用できる条件が異なりますので、所有されている不動産の条件と照らし合わせて、利用できるようでしたら必ず利用してください。
空き家の3,000万円の特別控除の特例とは
条件に当てはまれば、相続した不動産を売却したときに利益を3000万円まで控除できるのがこちらの「空き家の3000万円の特別控除の特例」です。
被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例とも言います。
最大の節税効果は約600万円です。(3000万円×税率約20%)
どんな条件に当てはまると利用できるかというと、
- 相続で取得した不動産であること
- 令和9年12月31日までの売却であること。
- 建物付きで、建物は分譲マンションのような区分所有ではなく、1戸建てであること。
- 昭和56年5月31日以前に建築された建物であり、その建物を耐震リフォームするか、取り壊して更地として売却すること。
- 相続開始直前まで被相続人(亡くなった方)が一人で居住していたこと。
亡くなったことで空き家になったことが条件です。平成31年4月1日の法改正で、要介護認定を受けて介護施設などに入所して、空き家になり、その後もずっと空き家だった場合でも、適用可能です。
- 相続開始日から3年を経過する年の年末までに売却すること。
- 売買で入ってくるお金(売買代金と精算金の合計額)が1億円以下であること。
- 相続したあとも、ずっと空き家であること。事業用や賃貸用としても利用していないこと
などです。条件に当てはまる人は必ず利用してください。
居住用財産の3000万円の特別控除の特例
こちらの特例は、もともと住んでいた自宅を売却するときに利用できる特例です。
空き家の特例と同じように譲渡所得を最大で3000万円まで控除することができます。
節税効果は同じく最大で600万円です。
どんなときに利用できるかと言うと・・・
- 所有者が自ら居住していた家屋か、その家屋の敷地や借地であること。
- 居住しなくなった日から3年経過する年の年末までに譲渡すること。
- 災害により消失した場合、その災害があった日から3年を経過する年の年末までに譲渡すること。
- 自己都合で家屋を取り壊した場合、取り壊した日から1年以内に譲渡契約を締結していること、かつ居住しなくなった日から3年経過する年の年末までに譲渡すること。
- セカンドハウスや別荘などの趣味・娯楽・保養などのために所有する家屋ではないこと。
- 買主が売主の配偶者・直系血族・生計を一にするもの・内縁などの特殊関係者ではないこと
- 売却した年に住宅ローン控除や認定長期優良住宅の特別控除の適用を受けていないこと。
など、このような条件があります。
自宅の所有期間は関係なく利用できます。
自宅が夫婦等の共同名義の場合には、それぞれが3000万円まで控除を受けることができます。
第三者へ賃貸していても、引っ越して3年経過する年の年末までの売却であれば利用可能です。
新潟のような地方都市の不動産の売却では、この特例が適用できる自宅の売却のときに譲渡所得税がかかることは、まれです。
もし、これからも利用する予定がない旧自宅を持っている方がいらっしゃいましたら、売却を検討する価値はあると思います。
所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例とは?
こちらの特例は、今ほど説明した、「居住用財産の3000万円の特別控除の特例」と併用できる特例です。
空き家の3000万円の特別控除の特例との併用はできません。
売却した年の1月1日時点で所有期間10年を超える自宅用不動産で、3000万円控除を利用しても利益が出てしまうときに、利益にかける税率を軽減することができます。
3000万円控除後の利益のうち、
6000万円以下の利益については、14%(所得税10% 住民税4%)
3000万円控除後の利益のうち、
6000万円以上の利益については、20%(所得税15% 住民税5%)
になります。
6000万円以下の利益へ適用される税率が6%軽減されます。
上の税率以外に復興特別所得税が税額の2.1%かかります。
また、3000万円控除以外の特例との併用はできません。
【まとめ】
・譲渡所得を圧縮できる代表的な特例は2つ
・相続した住宅を売却するときと自宅を売却するときに利用できる可能性がある
・どちらの特例も譲渡所得を3000万円控除でき、節税効果は最大600万円
まとめ
空き家を売却したときには様々な種類の税金がかかります。
具体的には、「印紙税」「登録免許税」「不動産譲渡所得税」です。
印紙税は契約書に貼付することで納税、
登録免許税は作業を行う司法書士や土地家屋調査士へ報酬と合わせて支払うことで納税、不動産譲渡所得税は売却した翌年の確定申告後の納税になります。
不動産譲渡所得税は購入したときの利益に対して課税される税金です。
また、所有期間によって税率が異なります。
所有期間が5年以下の場合は所得税と住民税、復興税と合算して39.63%、5年超の場合は20.315%です。
不動産譲渡所得税には条件を満たすと利用できる特例があります。
代表的なものに、もともとの自宅に利用できる「居住用財産の3000万円の特別控除の特例」と相続で取得した「空き家の3000万円の特別控除の特例」があります。
条件を満たす不動産を売却する場合はぜひ利用してください。