相続した空き家を売却するときに税金を節税できる、売却したときの利益を3000万円まで控除できる特別控除の特例をご存じですか?
この特例は、相続された住宅を活用する上で、一番大切な税制だと、私は思っています。
住宅にこの税制が利用できるか、必ずご確認をいただきたいです。
こちらの記事では空き家の3000万円の特別控除の特例を利用できる要件や、手続きの方法について詳しく解説しました。
この記事を読んでいただくと、こんなことが分かります。
・空き家の3000万円の特別控除の特例とはなにか?
・3000万円控除を利用できる要件
・建物の築年数の調べ方
・手続きの方法や必要な書類
目次
■「空き家の3000万円の特別控除の特例」のとてつもない節税効果とは?
■空き家などの不動産を売却したときの税額の計算方法とは?
■「空き家の3000万円の特別控除の特例」の要件とは?
■建物の築年数の簡単な調べ方とは?
■相続してから2年弱以内に空き家の活用方法を決めないと、損してしまいます
■手続きの方法や必要書類は?
・新潟市の場合の手続き方法
「空き家の3000万円の特別控除の特例」のとてつもない節税効果とは?
「空き家の3000万円の特別控除の特例」は、相続や遺贈で取得した空き家を売却したときの利益を最大で3000万円まで控除できる特例です。
正式な名称は「被相続人の居住用財産の3000万円の特別控除の特例」です。
(令和6年1月1日以降は不動産の共有名義人が3名以上の場合、一人当たりの控除額は2000万円になりました。)
なぜこちらの「3000万円控除」がとても大切かというと、売却したときにかかる税金を大幅に減額できるからです。
首都圏はともかく、地方都市の不動産の売却では、こちらの特例を利用すると、税額を0円にできることがほとんどです。
不動産の売却と税金は切っても切れない関係です。
購入したときの金額よりも1円でも高く売れると、利益が出た部分に対して一定の税金がかかります。
現在の不動産価格は、バブル以前の昔と比べるととても高額です。
購入してから50年前後、経過した不動産を売却すると、ほとんどの不動産で間違いなく納税義務が出ます。
例えば現在の価格で2000万円のご実家を売却したとします
購入したときの金額は、当時の契約書類がないため、わからないものとします。
所有期間はご両親の世代から通算して45年です。
この場合に、納めなければいけない税金は・・、なんと約386万円です。
ものすごい金額です。新車1台分です。
ここで「被相続人の居住用財産の3000万円控除の特例」の登場です。
さまざまな条件があるので、全ての不動産で利用できるわけではありませんが、
条件を満たすと不動産譲渡所得を3000万円まで控除できます。
最大の節税効果は、約600万円(3000万円の約2割)です。
この例で納めなければいけない386万円ももちろん非課税になります。
とてつもない威力です。
空き家などの不動産を売却したときの税額の計算方法とは?
不動産を売却したときの税金を「不動産譲渡所得税」と呼びます。
この税金は、売却益、つまり利益にだけかかります。
利益は下のような式で計算します。
「不動産譲渡益(利益)=(売却したときの金額・諸経費)-(購入したときの金額・諸経費)」
です。
この計算式で利益が出た場合、利益の部分にだけ一定の税率がかかります。
税率ですが、所有期間が通算(相続前+相続後)で5年以上の場合は、利益の20.315%です。
購入したときの金額は、購入当時の売買契約書などの書類で税務署へ申告します。
買った当時というと、かなり昔の書類です。
ご両親など、以前の所有者が大切に保管していれば購入金額が分かるのですが、家中を探しても当時の契約書が見当たらないということもあります。
そんな、どこにも当時の書類がない場合には売却金額の5%を購入金額として扱うことができます。
計算すると、
2000万円(売却金額)-100万円(売却金額の5%・購入金額)×20.315%=約386万円 です。
実際には売却するときの諸経費として、不動産業者に支払った仲介料や建物の解体費用、測量の費用も経費として扱えるため、正確な税額は若干変わります。
ですが、大きなお金であることは変わりません。
「空き家の3000万円の特別控除の特例」の要件とは?
では、3000万円控除はどんな要件を満たすと利用できるのでしょうか?
条件は・・・・、
- 相続で取得した不動産であること
- 令和9年12月31日まで、かつ相続開始日(お亡くなりになった日)から3年を経過する日の属する年の年末までの売却であること。(令和5年4月1日が相続開始日の場合、令和8年12月31日まで)
- 建物付きの土地で、建物は一戸建てであり、分譲マンションなどの区分所有ではないこと。
- 昭和56年5月31日以前に建築された建物であり、その建物を耐震リフォームするか、もしくは建物を取り壊して更地として売却すること。
- 相続開始直前まで被相続人(亡くなった人)がひとりで居住していたこと(亡くなることで空き家になったことが条件、亡くなる前の治療目的の入院や、要介護認定を受けて施設に入所したことで空き家になった場合も適用可能)、入所・相続発生後も誰も住んでおらず、空き家のままであること。(賃貸に1度出したり、誰かが住んだりすると、こちらの特例は使えません)
- 売却でもらうお金(売買代金と固定資産税等の精算金の合算)が1億円以下であること。
です。全ての条件を満たす必要があります。
簡単に言うと、
「相続で引き継いだ昭和56年5月31日以前に建てられた一戸建て付きの土地で、
お亡くなりになった人が生前一人でお住まいになっていて、
お亡くなりになったり、施設に入ったあとも空き家で、
亡くなった日から3年過ぎる年の年末までに、
更地にするか、建物を耐震工事をして売却すること、
売却したときに受け取るお金が1億円以下である」ことが条件です。
建物の築年数の簡単な調べ方とは?
この条件を全て満たす建物付きの土地のみ、いわゆる「3000万円控除」を利用できます。
建物の築年数の調べ方ですが、お手元にある登記事項証明書の内容でご確認をいただけます。
下の写真は、登記事項証明書のサンプルです。
写真の矢印の部分に、建物の築年数が表示されています。
もし、お手元にない場合は、お金はかかりますが、法務局に行くと誰でも取得できます。
費用は、数百円です。
毎年、市町村から春先に届く固定資産税の課税明細書にも建物の新築年が記載されています。
また、「昭和56年6月○日新築」のように、登記記録上、昭和56年5月31日以前に新築されていない場合でも、3000万円控除を利用できる可能性があります。
3000万円控除を受けることができる建物は、建築基準法上の旧耐震基準の建物です。
建築基準法は、昭和56年6月1日に地震への耐性についての基準が大幅に改正されたのですが、それ以前に建築確認を受けた建物を旧耐震基準の建物、それ以降の建物を新耐震基準の建物と呼んでいます。
そして、登記記録上の新築年月日は建築確認を受けた日ではありません。
つまり、実際には昭和56年5月31日以前に建築確認を受けている旧耐震基準の建物なのに、登記記録上は昭和56年6月1日以降に新築されている建物もあるということです。
登記記録上、「昭和56年6月○日新築」のように、3000万円控除が利用できなそうな建物もありますが、建築確認を受けている年月日が昭和56年5月31日以前なら、3000万円控除を利用できる建物です。
一般の方が調査するのは難しいと思いますので、調査のご要望がありましたら、ご相談ください。
相続してから2年弱以内に空き家の活用方法を決めないと、損してしまいます
空き家の3000万円控除は相続してから一定期間しか利用できない特例です。
例えば、令和5年中にご相続をした場合、売却までの期間は、令和8年の12月末までの3年弱です。
それまでに購入する人へ引き渡しをすることが必要です。
実際の広告・募集などの販売期間を考えると、住宅の今後について、さらに早めの決断が求められます。
相続してから2年間弱が検討期間とも言えます。
また、この制度は、所有者さんにとって、とても価値のある制度なのですが、一般的にはあまり知られていない制度でもあります。
特例を利用できる条件が揃っているにもかかわらず、空き家の状態で3年以上経過してしまう所有者様が後をたちません。
そんな方から不動産活用のご相談を受けると、「もう少し早くご相談をいただきたかった」と、やはり思ってしまいます。
「知らなかった」というだけで、何百万円の納税義務を背負ってしまうことは、本当にもったいないことです。これを機会に、必ず覚えて下さい。
3000万円控除を使える住宅を相続した場合、大きな税金の支払いを考えると、売却する価値は十分すぎるほどあります。
賃貸に出すことに面倒を感じており、3000万円控除を使えるのであれば、私は基本的に売却をお勧めしています。
手続きの方法や必要書類は?
空き家の3000万円控除の特別控除の特例を利用する場合、手続きが必要です。
手続きは2つあり、
・ひとつは空き家が所在する市町村への手続き、
・もうひとつは確定申告です。
まずは市町村への手続きの方法です。
新潟市の場合の手続き方法
私が不動産業の商圏にしている新潟市の場合の手続き方法を説明します。
他の市町村については各行政に確認してください。
まず、必要書類です。
・被相続人居住用家屋等確認申請書
新潟市のホームページで取得できます。以下のURLです。
https://www.city.niigata.lg.jp/kurashi/jyutaku/akiya/yokusei/akiyatokurei3000.html
・被相続人の住民票の除票
お亡くなりになった人が最後に住民票を置いていた市町村で取得できます。
・相続人全員の住民票
お住まいの管轄の役所で取得してください。
・売買契約書
契約すると控え分の契約書をもらえます。
・不動産会社が作成した物件資料(「現況空き家」・「取り壊し予定あり」と表示)
依頼した不動産会社よりもらってください。
・建物取り壊し後の建物閉鎖事項証明書
建物を解体した後に申請する滅失登記が完了した後に、管轄の法務局で取得できます
・土地の登記事項証明書
法務局で取得できます。
以前の所有者が施設へ入所されていた場合は以下も合わせて必要です。
・施設への入所直前に要介護、要支援認定を受けていたことを確認できる書類(介護保険の被保険者証など、)
お手元にない場合は、管轄の福祉課へ行政文書を開示請求することで取得できます
・戸籍の附票
もともと居住していた自宅と施設との異動の履歴を確認するための書類です。
・入所の契約書
お手元にない場合は当時、入所されていた施設へお問い合わせください。
・相続後に家財道具を撤去処分した際の契約書・領収証など
ない場合は新潟市の住環境政策課へご相談ください。
建物が未登記の場合は、さらに以下の書類の用意が必要です。
・昭和56年5月31日以前に建築されたことを証明できる書類
(固定資産課税明細書や建築計画概要書など)
・相続・遺贈で取得したことを証明できる書類
(遺産分割協議書など)
・建物を取り壊したことを証明できる書類
(解体工事を行った業者との請負契約書と領収証など)
以上のすべての書類が必要になります。かなりのボリューム感です。
こちらの書類をすべて用意したうえで、新潟市の住環境政策課の窓口へ申請します。
古町ルフルの6階にあります。
申請後、2~3週間程度で、「被相続人居住用家屋等確認書」の控えをもらうことができます。
そちらの書類を添付して、売却した翌年に確定申告をします。
確定申告の時に必要な書類は、
・確定申告書・譲渡所得の内訳書
国税庁のホームページで取得できます。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/syotoku/pdf/r03_joto_01.pdf
・土地と建物の登記事項証明書
建物が未登記の場合は遺産分割協議書と固定資産課税明細書
解体業者との請負契約書・領収証
・被相続人居住用家屋等確認書
・売買契約書
以上になります。
必要書類をそろえて、確定申告をすることで空き家の3000万円の特別控除の特例が利用できます。
手続きが難しいという人は税理士に依頼することで代理申請することも可能です。
まとめ
「空き家の3000万円の特別控除の特例」は相続した空き家などの不動産を売却するとき、最も重要な特例です。
これを機会に必ず覚えてください。
手続きは不動産が所在する市町村への申請と、確定申告の2段階になっています。
必要書類も多いため、利用する場合は事前に早めに準備してください。
また、空き家の3000万円の特別控除は相続した空き家にしか利用できませんが、
転居で空き家になった場合に利用できる「居住用財産の3000万円の特別控除の特例」という別の特例もあります。
自宅を売却するときには、ぜひ利用してください。
「居住用財産の3000万円の特別控除の特例」と「譲渡所得税の計算方法」、「確定申告の方法や必要書類」について詳しく説明した記事のリンクを以下に記載しました。
ご興味のある人はご覧になってください。