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空き家問題とは、放置された空き家が周辺地域に悪影響を及ぼし、また空き家の利活用が進まず、地域の人口が空洞化し、地域の活力が減少していく問題です。

すでに日本全国で起こっている問題で、身近な問題でもあります。

こちらの記事では、日本の空き家の現状・空き家が生まれる原因や、空き家問題が抱えるリスク、行政の対策について解説しました。

 

この記事を読んでいただくと、こんなことが分かります。

・空き家問題の現状や原因、行政の対策

 

目次

■日本の空き家の現状

■空き家が増え続ける原因

・少子高齢化・核家族化

・空き家所有者の心理的、物理的な問題

■空き家が抱えるリスク

・老朽化が原因の建物の倒壊や漏電やガス漏れによる火災の発生

・景観・治安・衛生面の悪化

・地域社会が維持できなくなる

■国や自治体の対策

・空き家等対策特別措置法の施行

・空き家を売却したときの税金を控除できる特別控除の特例の創設

・空き家バンクで利活用を促進する

■まとめ

 

日本の空き家の現状

日本全国にある空き家の数は2018年の時点で約349万戸と言われています。

日本国内にある住宅戸数は約6500万戸、空き家が全体に占める割合は約5.3%で、

20軒に1軒が空き家という状況です。

 

総務省の住宅・土地統計調査によると、空き家の総数はこの20年間で576万戸から849万戸に増え、約1.5倍に増えたことになります。

ただし、この849万戸という軒数は、私たちが空き家と言われて想像する住宅だけではなく、

「賃貸物件」や「売買物件」、「別荘」などの空き室や空き家を合計した数値です。

 

法律では、「おおむね年間を通じて居住やそのほか利用がされていない建築物」を空き家と定義していますが、住宅・土地統計調査では空き家を具体的に以下の4つに分類しています。

 

・賃貸用の住宅 新築・中古に関係なく、賃貸の目的で空き家になっている住宅

 

・売却用の住宅 新築・中古に関係なく、売却の目的で空き家になっている住宅

 

・二次的住宅 自宅とは別に、またに寝泊まりする別荘など、普段は居住者がいない住宅

 

・その他の空き家 上記以外に人が住んでいない住宅で、入院などにより長期不在となっている住宅や取り壊し予定の住宅など

 

私たちが空き家と言われて想像するのは、上記のうちの「その他の空き家」です。

誰も住んでおらず、長期にわたって不在にしているのが「その他の空き家」で、

空き家問題で議論されているのも、年々増えている「その他の空き家」への対策です。

 

その他の空き家についても、この20年間で約182万戸から349万戸に増え、2倍に増えたことになります。以下のグラフをご覧ください。

空き家が増え続ける原因

空き家が増え続ける原因には大きく以下の2つの原因があります。

 

・少子高齢化・核家族化

・空き家所有者の心理的、物理的な問題

 

少子高齢化・核家族化

空き家が増える背景にあるのは、「少子高齢化」と「核家族化」です。

国土交通省の調査によると、空き家所有者が空き家を取得した原因の54.6%は「相続」です。

この数値は、空き家が生まれる経緯が親が亡くなり、別居していた子が相続するケースが多いことを示しています。

ひと昔前は空き家も少なかったように思います。

祖父母・両親・子の3世代が同居する世帯も珍しくありませんでした。

所有者がお亡くなりになっても、同居している家族が家を継ぐことが多かったため、

空き家になってしまうことは現在よりも少なかったのだと思います。

 

しかし、家を引き継ぐという考えは、今では少数派で、核家族化が進んでいる現代では、両親と子供だけの世帯が一般的になっています。

一定の割合の子供も進学・就職のタイミングで、首都圏などに異動します。

県外に異動する機会がなくても、親の世代と同じ住宅に同居する人は少数派です。

その結果、「別居している家族が実家を相続し、誰も利用する人がいなく、空き家になるというのがひとつのパターンになり、空き家が増え続けています。

 

空き家所有者の心理的、物理的な問題

空き家の所有者が空き家から遠方に住んでいるため、空き家に頻繁に家財道具の整理のために通うことができないことも、老朽化した空き家が増える原因になっています。

以下は空き家所有者の自宅から空き家までの移動の際の所要時間を表したグラフです。

国土交通省の調査によると、空き家所有者全体のうち、自宅から空き家の所在地までの移動の所要時間が1時間以上と答えた人の割合は約3割でした。

遠方に住んでいることで、家財道具の整理のための時間がとれず、作業が進まないことが空き家の利活用の時期を遅らせる原因になっています。

空き家が所在する地域への土地勘がなく、どこに相談すればよいのか分からないことも大きな原因です。

 

また、空き家の利活用の時期を遅らせる理由として、「気持ちの問題」があります。

空き家を所有している人の半数以上は相続で空き家を取得しており、所有者にとって空き家は、もともと住んでいた「実家」に当たります。

実家には亡くなった両親との思い出が詰まっており、売却や賃貸などの活用に抵抗感があるという人は一定数いらっしゃいます。

遺品整理を行えば、両親との思い出を思い起こすような遺品が出てくることもあります。

遺品の整理も気持ちの整理もなかなか進まず、活用するまでに至っていないのです。

 

空き家が抱えるリスク

空き家が増える社会で、空き家はどのような悪影響を与えるでしょうか?

空き家が抱えるリスクには、以下のような3つのリスクがあります。

 

・老朽化が原因の建物の倒壊や漏電やガス漏れによる火災の発生

・景観・治安・衛生面の悪化

・地域社会を維持ができなくなる

 

これらのリスクが重なって、周辺地域に多大な悪影響を及ぼすのが空き家の問題です。

 

老朽化が原因の建物の倒壊や漏電やガス漏れによる火災の発生

349万戸の空き家のうち、約7割の240万戸は一戸建ての木造住宅です。

また、老朽化・破損がある住宅はそのうちの約101万戸、

さらに空き家全体のうち、新築されたのが昭和55年以前の建物は全体の75%にも上ります。

 

昭和56年以前に建築確認を受け、新築された建物は、現在の建物に比べると地震への耐久性が弱く、震度6以上の地震で倒壊するリスクが非常に高いのが特徴です。

空き家のうちの75%は耐震性に問題を抱えており、さらに老朽化も進んでいます。

日本はご存じの通り、地震などの自然災害が多く発生する地域です。

耐震性が低い建物が空き家として多く存在し、老朽化が進んでいることで、

自然災害が発生したときの倒壊や、二次的な被害のリスクが非常に高まります。

 

また、建物の老朽化は、電気配線やガス管の経年劣化が原因の火災の原因にもなります。

 

景観・治安・衛生面の悪化

管理されていない空き家は周辺の住民にとって迷惑な存在です。

敷地内の草木は伸び放題になり、地域の景観を損ねます。

ねずみやハクビシン、シロアリなどの害虫や害獣が住みつき、隣家へ被害を与えてしまう可能性もあります。

結果的に不法投棄を誘発し、ごみや害獣のフンが発する悪臭などの問題にもなりえます。

また、管理不足で敷地内に外からの死角が増えると、不法侵入者や空き巣、放火などの犯罪行為の被害に遭うリスクも高まります。

一つの空き家が放置されることで、近隣の住民に大きな被害を与えてしまうことになります。

 

地域社会が維持できなくなる

空き家が増えるということは、その地域に住む人が減るということです。

人が減り続ければ、その地域の経済的な活力がどんどん減っていき、

市町村の税収や地域の消費活動に大きく影響します。

 

税収が減れば、道路や小学校、道路や水道などのライフライン、消防や警察などの防災

対策の費用を賄うことが難しくなります。

スーパーなどの商業施設や医院、銀行など、生活するうえで欠かせない施設も事業を続けていくことができず、撤退することになります。

 

空き家の利活用が進まず、人の入れ替わりが進まない状況では、地域そのものの存在を維持することができなくなってしまいます。

 

国や自治体の対策

国や自治体は2030年には空き家の件数が2018年時点の349万戸から470万戸に増えると予想しており、対策を通じて400万戸に抑えることを目指しています。

それでは、どのような対策を講じているのでしょうか?

 

空き家等対策特別措置法の施行

空き家等対策特別措置法とは、周辺地域に悪影響を及ぼす空き家を「特定空き家・管理不全空き家」に指定し、適切な管理や利活用を促すために施行された法律です。

 

この法律では以下のような空き家を「特定空き家」と定義しています。

・著しく保安上危険となるおそれのある状態

・著しく衛生上有害となるおそれのある状態

・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態

・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

 

具体的には、

・建物が傾いていて、倒壊の可能性がある

・屋根や外壁、看板、コンクリート塀などが破損しており、落下の可能性がある

・建物や敷地内に落書きや立ち木の繁殖、ごみの散乱など、周囲の景観を損ねる部分がある

・立ち木が近隣へ散乱、動物の糞尿の臭気、不審者が侵入している

などが挙げられます。

 

「管理不全空き家」は放置すると「特定空き家」になる可能性がある空き家のことです。

行政から特定空き家・管理空き家に指定され、そのまま放置すると、固定資産税の軽減措置が解除されることになり、更地の状態と同じ税金を課税されます。

つまり、最大で6倍近く固定資産税が増えることになります。

 

また、所有者が行政の助言や指導、命令を無視し続けると、行政代執行という形で、所有者の代わりに立ち木の剪定、ごみの撤去、建物の解体などの作業を行うこともできます。

その費用は所有者へ全額請求されることになります。

 

この法律が施行されたことで、所有者は空き家を適切に管理しなければいけなくなりました。

 

空き家を売却したときの税金を控除できる特別控除の特例の創設

空き家を相続した人が早いタイミングで不動産を売却できるように、売却したときの税金の納税額を抑えられる税制の特例が創設されました。

長期間にわたって空き家を放置することがないように講じられた対策です。

 

「空き家の3000万円の特別控除の特例」と言い、以下の要件を満たした空き家を売却したときに、譲渡所得(売却益)から3000万円を控除できる特例です。

 

  • 相続で取得した不動産であること

 

  • 令和9年12月31日まで、かつ相続開始日(お亡くなりになった日)から3年を経過する日の属する年の年末までの売却であること。(令和5年4月1日が相続開始日の場合、令和8年12月31日まで)

 

  • 建物付きの土地で、建物は一戸建てであり、分譲マンションなどの区分所有ではないこと。

 

  • 昭和56年5月31日以前に建築された建物であり、その建物を耐震リフォームするか、もしくは建物を取り壊して更地として売却すること。

 

  • 相続開始直前まで被相続人(亡くなった人)がひとりで居住していたこと(亡くなることで空き家になったことが条件、亡くなる前の治療目的の入院や、要介護認定を受けて施設に入所したことで空き家になった場合も適用可能)、入所・相続発生後も誰も住んでおらず、空き家のままであること。(賃貸に1度出したり、誰かが住んだりすると、こちらの特例は使えません)

 

  • 売却でもらうお金(売買代金と固定資産税等の精算金の合算)が1億円以下であること。

 

不動産の譲渡所得(売却益)は下のような式で計算します。

 

「不動産譲渡益(利益)=(売却したときの金額・諸経費)-(購入したときの金額・諸経費)」

 

です。

 

この計算式で利益が発生場合、利益の部分にだけ一定の税率がかかります。

税率は、所有期間が通算(相続前+相続後)で5年超の場合は、利益の20.315%です。

 

購入したときの金額は、購入当時の売買契約書などの書類で税務署へ申告します。

家中を探しても当時の契約書が見当たらないということもあります。

どこにも当時の書類がない場合には売却金額の5%を購入金額として扱うことができます。

 

例えば、2000万円で空き家を売却し、当時の取得費が不明の場合の税額は、

 

2000万円(売却金額)-100万円(売却金額の5%・購入金額)×20.315%=約386万円 です。

 

所有者には非常に大きな納税の負担が発生しますが、空き家の3000万円の特別控除を利用すると、税額が0円になり、大幅に負担を軽減することができます。

 

空き家バンクで利活用を促進する

空き家の利活用が進まない要因の一つに、空き家所有者に利活用についての情報が不足していることが挙げられます。

空き家を活用しやすい環境を作るために行政から提供されているサービスが「空き家バンク」です。

空き家バンクでは、空き家所有者と空き家を購入したいお客様とのマッチングサービスを行っています。

特に、首都圏からの移住・定住者の受け入れのためのマッチングに力を入れている行政が多く、約8割の市町村が利活用の取り組みを行っています。

ただし、すべての空き家情報の受け入れを行っているわけではなく、一定の要件を満たした空き家の情報のみを受け入れている現状もあります。

 

まとめ

日本全国の空き家は、人口減少・核家族化を背景にこれからも増え続ける見通しです。

「実家の活用に抵抗がある」というお気持ちは分かりますが、

経年が進んだ空き家を所有し続けるには、建物の倒壊や火災などのリスクもあり、

築年数が経過した空き家ほど、早いタイミングでの活用が求められます。

空き家問題への行政の対応も年々厳しくなっており、今後さらに厳しい状況になることが予想されます。

「何から手を付けてよいか分からない」

「固定資産税の負担が難しい」

「遠方の実家を維持できない」

など、ご不安を持っている人がいらっしゃいましたら、すぐに不動産会社へ相談してください。

以下に活用について詳しく解説した時期を掲載しました。

ご興味のある人はご覧になってください。

 

 

 

 

 

この記事を書いた人

小川洋輔

小川 洋輔

新潟市の不動産会社 敬和不動産株式会社の代表
1981年生まれ、新潟市出身、南中野山小学校、東石山中学校、新潟明訓高校、明治大学出身。
宅地建物取引士、2012年より不動産業界に従事しています。

「はじめての不動産活用の「不安・心配」を「納得・安心」へ」をモットーに不動産活用の情報を提供させていただいています。
また、会社名の敬和不動産は生前、親孝行できなかった父の名前からもらいました。
私の仕事は、ご相談者様の最後の親孝行・兄弟孝行のお手伝いだと思っています。

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