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「実際に不動産を売りに出すときの価格は査定額どおりにしなければいけないの?」

そんなことはありません!

 

初めて不動産を売却する人の中には、不動産会社から提示された査定額そのままで売りに出さなければいけないと思っている人もいらっしゃいますが、そうではありません。

売主が自由に決めて問題ありません。

 

だからと言って、相場価格を完全に無視して自由に売り出し価格を決めてしまうと、売却自体がうまくいきません。

それでは、どのように売り出し価格を決めれば良いでしょうか?

こちらの記事では、売り出し価格の決め方や、決める際に失敗しないための注意点について解説しました。

 

この記事を読んでいただくと、こんなことが分かります。

・査定額と売り出し価格・成約価格の違い

・売り出し価格を決めるための流れと方法

・売り出し価格を決めるための注意点

 

目次

■不動産の売り出し価格と査定価格・成約価格の違い

・査定価格とは?

・売り出し価格・成約価格とは?

■売り出し価格を決めるための流れと方法

・相場価格を確認する

・スーモやアットホームで近隣の販売状況を調べて、売り出し価格を決める

■売り出し価格を決めるときの注意点とは?

・相場価格を意識して決定する

・ご自身の不動産をできるだけ客観的に評価する

・売り出し価格で販売する期間をあらかじめ決めておく

■まとめ

 

不動産の売り出し価格と査定価格・成約価格の違い

不動産を売却するときの価格には3つの種類があります。

「査定価格」・「売り出し価格」・「成約価格」の3種類です。

こちらの3つの価格には明確な違いがあります。

まずは、3つの価格の違いをご理解ください。

 

査定価格とは?

査定価格は不動産会社から提示される売却時の想定価格です。

依頼者と不動産会社との媒介契約の有効期限が最長で3カ月間であるため、

販売を始めてから3か月以内に成約が予想される想定価格として依頼者へ提示されます。

 

媒介契約とは売却を依頼する不動産会社と依頼者との間で締結される契約のことです。

書面上で売り出し価格や成約時に不動産会社が受領する報酬額(仲介手数料)、の金額、契約期間などを確認する作業になります。

 

 

査定方法には「取引事例比較法」・「原価法」・「収益還元法」の3種類がありますが、

一般的な不動産の場合に利用される査定方法は「取引事例比較法」になります。

 

取引事例比較法は、査定対象の不動産と条件が似ている不動産が、過去にいくらで取引されているか確認・精査したうえで提示された売却時の想定価格です。

一般的に相場と呼ばれる金額とほとんど同等の金額と同じだとお考えいただいて問題ありません。

 

 

売り出し価格・成約価格とは?

売り出し価格とは、実際に不動産を売り出すときに広告で公開する価格のことです。

査定価格は近隣の取引事例を精査したうえで不動産会社から依頼者へ提示される客観的な評価になりますが、売り出し価格は所有者の気持ちが入った希望の価格、いわば「チャレンジ価格」とも言えます。

 

査定価格はあくまでも査定価格です。

先ほどもお伝えした通り、売り出し価格を決める権限は所有者にあります。

自由に決めていただいて問題ありません。

 

ただし、査定価格は相場の金額であり、相場を大きくはみ出して高額な価格を設定したり、逆に低すぎる価格を設定すると、「まったく売れない」「低い金額で手放してしまう」など、大きな不利益が生じます。

 

それに対して、成約価格とは実際に成約に至った価格です。

販売を始めた後に購入希望者との値引き交渉などを経て決まった、実際に購入者が現れた際の金額になります。

 

不動産の売買では購入希望者の値引き交渉は高い頻度で行われます。

「あと100万円下がれば購入したい」というような形で交渉されることが多いです。

購入希望者からの交渉を受けて、売主・買主の間で合意に達した条件が成約価格で、

実際に売りに出してみないと分からない価格でもあります。

 

売り出し価格を決めるための流れと方法

売り出し価格を何となく決めてしまうと、「全く売れない」「相場よりも安価で手放してしまう」など、所有者にとって大きな不利益が生じます。

 

それでは、売り出し価格はどのように決めれば良いでしょうか?

以下の流れと方法で売り出し価格を決めてください。

 

・複数の査定額(相場の価格)を確認する

・スーモやアットホームで近隣の販売状況を調べて、売り出し価格を決める

 

相場価格を確認する

相場価格は査定価格と同等の金額です。

この時点で不動産会社へ査定を依頼していない人は相場がどの程度の状態なのか確認するために、必ず不動産会社へ査定を依頼してください。

 

査定は複数の不動産会社へ依頼することが望ましいです。

不動産の売却は、ほとんどの人にとって初めての経験です。

不動産会社1社からの査定額を確認して、その信ぴょう性を見極め、相場の価格を判断するのは初めて不動産を売却する人にとって非常に難しい作業です。

 

複数の不動産会社から提示された査定額を並べて確認することで、何となくでも相場価格が見えてきます。

忙しい人でも、できるだけ複数の不動産会社へ査定額の提示を求めましょう。

 

また、自分で相場価格を確認する方法もあります。

国土交通省が管理するサイトである不動産ライブラリーを利用する方法です。

先ほどもお伝えしたように、ほとんどの不動産を査定する際に、取引事例比較法という査定方法が利用されます。

査定対象の不動産と似た条件の不動産が、過去にいくらで成約したか確認することで査定する方法です。

つまり、過去の取引事例を確認できれば、自分でも相場価格を確認できることになります。ご興味のある人は以下の方法で調べてみてください。

 

 

ただし、複数の不動産会社から提示された査定額の中に、高すぎる査定額が混ざっている場合は注意が必要です。

不動産会社の中には、依頼者から売却の依頼を受ける目的で、意図的に相場を無視した査定額を提示する会社もあります。

そのような会社に売却を依頼してしまうと、成約までに非常に長い時間がかかってしまったり、物件情報が塩漬けにされて想定以下の金額で成約になってしまったり、依頼者にとって大きな不利益に繋がることもあります。

以下のリンクに詳細を説明しましたので、ぜひご確認ください。

 

 

把握することができた査定額(相場価格)をもとに売り出し価格を決めていきます。

 

スーモやアットホームで近隣の販売状況を調べて、売り出し価格を決める

次に、スーモやアットホームで近隣の販売状況を確認します。

スーモやアットホームは不動産会社各社が購入希望者を探すために物件情報を掲載するサイトです。

購入希望者にとっては物件情報が網羅されているため、希望の物件を探しやすいというメリットがあります。

 

スーモやアットホームには、ご自身の不動産のライバル物件の情報も網羅されています。

孫子の言葉に「己を知り敵を知れば百選危うからず」とありますが、自分と敵を研究し、売り出し価格を決めることが成功への近道です。

 

調べるときに注意していただきたいのは、立地条件が似ている情報を探してください。

所在する地域は不動産の価格に最も大きな影響を与えます。

立地条件が異なる不動産と比較しても、まったく参考になりません。

 

参考材料として、例えば、土地を販売する場合で考えてみます。

スーモやアットホームで近隣のライバルの物件を調べた結果、以下の状況になっているとします。

 

ご自身の不動産 50坪 南向き 道路幅員4m

 

Aの土地 50坪 南向き 道路幅員6m 販売坪単価20万円 土地総額1000万円

 

Bの土地 50坪 北向き 道路幅員6m 販売坪単価18万円 土地総額900万円

 

ご自身の不動産は、AやBの土地と比べたときに、どのような立ち位置になるでしょうか?

 

Aの土地は南向きの土地で、ご自身の不動産と同じ条件ですが、Aの土地は道路幅員が6mで、ご自身の不動産は4mです。

6m幅員の道路は車両の相互通行も容易にでき、4m幅員の道路に面した土地よりも需要があります。

 

また、Bの土地は道路幅員は6mですが、北向きの土地です。

ご自身の土地は4m幅員ですが、南向きの土地です。

 

3つの不動産の優劣を表すと、

Bの土地 〈 ご自身の不動産 〈 Aの土地

もしくは、Bの土地 = ご自身の不動産 〈 Aの土地 になります。

 

結果的に売り出し価格は坪単価で18万円から19万円の間で検討が必要ということになります。

20万円を超えることは、まずありません。

 

こちらの具体例はイメージしやすいものですが、売り出し価格を決める際の考え方は同じです。

近隣のライバル物件を精査し、ご自身の不動産が市場の中でどのような立ち位置にあるのかを考え、価格を当てはめていく方法です。

 

売り出し価格を決めるときの注意点とは?

売り出し価格を決めるときは以下のポイントを念頭に入れながら決めてください。

失敗すると、成約するまでに非常に長い時間がかかったり、当初の想定よりも低い金額で売却することになったり、不利益を被ることになります。

ご注意ください。

 

・相場価格を意識して決定する

 

・ご自身の不動産をできるだけ客観的に評価する

 

・売り出し価格で販売する期間を決めておく

 

相場価格を意識して決定する

相場価格を意識して売り出し価格を決めてください。

相場価格とは不動産会社から提示された査定額や不動産ライブラリーで調査した過去の取引事例をもとにした金額です。

相場から2割も3割も乖離した金額を売り出し価格にしても、売れることはまずありません。

 

不動産を探しているお客様には予算があり、長い時間をかけて自分の条件に合う物件を探しています。

また、長い時間をかけて物件を探している間に、ある程度の相場観を持っているお客様が非常に多いです。

 

相場をかけ離れた売り出し価格で販売しても、成約できることはほとんどありません。

購入希望者に違和感を与えるような価格設定では購入希望者が現れず、売れ残ってしまいます。

 

売り出し価格の目安の範囲は、相場価格の1割程度を上乗せするイメージです。

相場が1000万円の場合には売り出し価格は1100万円です。

 

ただし、スーモやアットホームで近隣のライバル情報を確認した結果、どの不動産も相場通りの価格で販売している場合は要注意です。

 

周辺の不動産が相場通りに売り出し価格を決めている場合、需要が減退している可能性があります。

不動産の価格は需要と供給のバランスで決まります。

欲しいという人が多い地域で、供給量が需要に対して少なければ、価格は上昇します。

逆に、欲しいという人が少ない地域で、供給量が需要に対して多ければ、価格は下落します。

 

相場通りの価格で販売している不動産が多い地域では、需要に対する供給量が多く、値崩れしているケースが非常に多いです。

そのような地域では、相場通りの価格で売り出す方法がベターです。

 

ご自身の不動産をできるだけ客観的に評価する

ご自身の不動産をできるだけ客観的な情報をもとに評価してください。

これは非常に大切な第一歩です。

なぜかというと、自己評価が相場より異常に高い場合、実際に販売のための広告をしても、うまくいかないからです。

また逆に、自己評価が低すぎる場合は、異常に安い価格で手放してしまうこともあります。つまり、その分だけ損をしてしまいます。

 

以前に私のお客様で、「実家が300万円くらいで売れればうれしい」くらいに考えていた人がいらっしゃったのですが、実際には1200万円で売却できたケースがあります。

逆に、特に根拠もなく「1600万円くらいで売りたい」と考えていた売主さんのケースでは、

実際には600万円(しかも古い家だったため、建物の解体費用は売主負担)でしか売却できなかったというケースもあります。

ウソみたいなホントの話です。

 

この2つの極端な自己評価には共通している点があります。

それは、「将来の買う人、つまりお客様の視点・感覚が欠けている」ということです。

 

先ほどもお伝えしたとおり、不動産の価格は市場の中での需要と供給のバランスで決まります。

お客様の感覚が抜けた価格の決め方や、ポジティブ(もしくはネガティブ)な思い込みで価格を決めてしまうことは、悪い結果しか生み出しません。

 

ご実家やご自宅のように元々住んでいたり、想い入れの強い不動産の場合、所有者が「とても価値がある」と考えていたり、反対に「全く価値がない」と考えていることがよくあります。

 

気持ちはとてもわかるのですが、不動産の売却は第3者があってのことです

まずは自分の感覚からできるだけ離れて、不動産の市場の中での価値を確認してみてください。

金額設定に見合っているかどうかを判断するのは所有者ではなく、購入するお客様だということを肝に銘じてください。

 

売り出し価格で販売する期間をあらかじめ決めておく

「売り出し価格を高くしても、途中で下げれば問題ないのでは?」とお考えになる人もいらっしゃるかと思います。

確かにその通りです。

お客様からのお問い合わせが来ない状況でも、状況に合わせて臨機応変に条件を変更していけば問題が起こることはありません。

 

問題は売り出し価格で長期間、販売を続ける場合に起こります。

つまり、売り出し価格という「チャレンジ価格」でチャレンジし続ける場合です。

 

購入希望者には予算があり、長い時間をかけて自分の予算に合った物件を探しています。

また、長期間、物件情報を眺めることで、相場観が養われています。

相場観を持っているお客様が違和感を持つような価格設定で販売をしても、物件情報を見てもらう機会を失い、具体的なお問い合わせにつながりません。

お問い合わせがないということは、お客さんから無言で、「高い」と言われているのと同じです。

 

事前に、いつまで売り出し価格でチャレンジするのか決めるような柔軟さが必要です。

問い合わせが全くない状況でもチャレンジ価格で粘る人もいらっしゃいますが、今までの経験上、粘っても購入する人が現れることは、ほとんどありません。

 

販売する期間が長くなればなるほど、物件情報が塩漬けになり、お客様から警戒される可能性もあります。

「なぜ、ずっと同じ金額で販売しているのだろう?」と思われることで、さらにお問い合わせをいただく機会を失うこともあるのです。

 

売り出し価格(チャレンジ価格)で販売を始める場合は、いつまで販売をするのか、期間をあらかじめ決めておくことをお勧めします。

 

まとめ

売り出し価格を決める際には、事前に相場価格と近隣のライバル物件の状況を客観的に把握する必要があります。

 

相場価格を把握する方法は、複数の不動産会社から査定額を提示してもらう方法と、国土交通省の不動産ライブラリーを利用する方法の、2つがあります。

 

ライバル物件の情報はスーモやアットホームなどの不動産情報が網羅されたサイトを利用して調べます。

ご自身の不動産が近隣のライバル物件と比べて、どのような立ち位置にあるのか、できるだけ客観的に評価してください。

主観で判断しても良いことはありません。

 

売り出し価格を決めるとき、相場価格を無視した価格設定にしないこと、客観的に自分の不動産を評価すること、売り出し価格でチャレンジする期間をあらかじめ決めてください。

この記事を書いた人

小川洋輔

小川 洋輔

新潟市の不動産会社 敬和不動産株式会社の代表
1981年生まれ、新潟市出身、南中野山小学校、東石山中学校、新潟明訓高校、明治大学出身。
宅地建物取引士、2012年より不動産業界に従事しています。

「はじめての不動産活用の「不安・心配」を「納得・安心」へ」をモットーに不動産活用の情報を提供させていただいています。
また、会社名の敬和不動産は生前、親孝行できなかった父の名前からもらいました。
私の仕事は、ご相談者様の最後の親孝行・兄弟孝行のお手伝いだと思っています。

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