「今は首都圏に住んでいるけど、将来的には実家に戻ってのんびり生活したい」
「将来的には、子供などの親族に住んでもらいたい」
「両親の3回忌が済んだあとで活用したい」
そんな事情で、しばらくは空き家のままで管理しようと思っている人もいらっしゃいます。
空き家の管理は時間も手間もかかる作業ですが、
適切な管理をすることで、固定資産税が上がるのを防いだり、資産価値を維持したり、様々なメリットもあります。
こちらの記事では、空き家を管理する4つのメリットと、適切な管理方法ついて詳しく説明していきたいと思います。
この記事を読むと、こんなことが理解できます
・空き家を管理することで受けられるメリット
・空き家のチェックポイント
・空き家の具体的な管理方法
目次
■空き家を管理することで受けられる4つのメリットとは?
・特定空き家・管理不全空き家に指定され、固定資産税が増えることを防ぐ
・資産価値を保ち、安価に手放してしまうことを防ぐ
・近隣とのトラブルになったり、損害賠償の義務を負うリスクを防ぐ
・空き巣や不法侵入などの犯罪被害にあう可能性を下げられる
■庭(敷地内)を確認・管理するときのポイントとは?
■建物の屋根や外壁などを確認・管理するときのポイントとは?
・屋根
・外壁
・雨どい
・門・塀
・テレビアンテナ
■建物の資産価値を維持するための管理方法とは?
・通気・換気
・給湯器の凍結防止
・悪臭予防のための汲み取りや排水口の処理
・畳の湿気予防
■空き家に火災保険をかけるべき?
■電気・ガス・水道の契約はしておいたほうが良い?
■まとめ
空き家を管理することで受けられる4つのメリットとは?
空き家を適切に管理することで受けられるメリットは以下の4つです。
・特定空き家・管理不全空き家に指定され、固定資産税が増えることを防ぐ
・資産価値を保ち、安価に手放してしまうことを防ぐ
・近隣とのトラブルになったり、損害賠償の義務を負うリスクを防ぐ
・空き巣や不法侵入などの犯罪被害にあう可能性を下げられる
特定空き家・管理不全空き家に指定され、固定資産税が増えることを防ぐ
特定空き家・管理不全空き家とは、市町村から「周辺地域に悪影響をおよぼす空き家」と指定された空き家のことです。
空き家所有者にとってのデメリットは、特定空き家・管理不全空き家に指定されると土地の固定資産税が最大で6倍になることです。
日本国内の空き家の数は年を追うごとに増え続けています。
2023年に実施された総務省の調査によると、全国の空き家の戸数は約900万戸、日本国内の総戸数約6500万戸に占める割合は約13.8%で過去最高の件数になりました。
私が生活する新潟市の総住宅数が約32万戸なので、全国にはその約30倍の戸数の空き家があることになります。
適切な管理がされていない空き家の影響は周辺地域の治安や景観の悪化、建物やブロック塀などの倒壊による被害など、大きな社会問題になっています。
今後も「核家族化」や「少子高齢化」は進み、空き家の数が増えていくことを考えると、空き家対策は必須で急がなくてはいけない課題と言えます。
国は管理されていない空き家の数を減らしたいという理由で、平成26年に「空き家等対策特別措置法」という法律が施行し、市町村は法律にもとづいて以下のような空き家を「特定空き家」に指定することができるようになりました。
・著しく保安上危険となるおそれのある状態
・著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
具体的には、
・建物が傾いていて、倒壊の可能性がある
・屋根や外壁、看板、コンクリート塀などが破損しており、落下の可能性がある
・建物や敷地内に落書きや立ち木の繁殖、ごみの散乱など、周囲の景観を損ねる部分がある
・立ち木が近隣へ散乱、動物の糞尿の臭気、不審者が侵入している
などが挙げられます。
また、「管理不全空き家」とは適切な管理がされていない空き家の中で、放置すると特定空き家になる可能性がある空き家のことを指します。
この「管理不全空き家」という言葉は令和5年に法律が改正されたことで生まれた言葉です。
それまでは特定空き家のみが固定資産税の軽減措置の解除の対象でしたが、令和5年の法律の改正で対象が広がり、空き家の所有者にとって、さらに厳しい状況になりました。
ただし、適切に管理を行うことで特定空き家・管理不全空き家に指定され、固定資産税が増えてしまうデメリットを防ぐことができます。
資産価値を保ち、安価に手放してしまうことを防ぐ
住宅は人が住まなくなると、急速に劣化していきます。
そして急速に劣化していくと、建物の資産価値も比例して下がっていくことになります。
人が住んでいない空き家が劣化しやすい理由は以下の4つです。
・人の出入りがなく、湿気がこもる
・故障や不具合に気づかず、雨漏りや水漏れが起こる
・上下水道を利用しないため、給排水管がさびて詰まる
・白アリや小動物、ダニ、ねずみが住みつく
人の出入りがないと建物内に湿気がこもり、建材が湿気を吸収し、大量のカビが発生します。
人が住んでいれば、ドアや窓の開け閉めが頻繁にされ、室内の湿気が外に出ていく機会が頻繁にありますが、だれも住んでいない空き家では湿気が建物内にこもり続けます。
湿気がこもると、建物の木材が水分を吸い取ります。
さらにカビが大量に発生し、建物の柱などの躯体部分や壁・床・天井などの建材が痛み、老朽化がどんどん進んでいきます。
人が住んでいないと屋根や外壁、設備の不具合が生じても気づかないことがあります。
屋根や外壁からの雨漏り・水漏れは建物内の湿度をあげてしまうことはもちろん、建物の柱などの躯体部分を痛め、腐らせてしまうこともあります。
躯体部分が腐ってしまっては将来にわたって建物を利用することはできません。
上下水道を利用しないと、給排水管内の水が枯れ、さびの原因になります。
さびが大量に発生すると詰まりの原因になり、最悪の場合には給排水管に穴があき、利用が困難な状態にもなりえます。
また、水が枯れた給排水管からハエやゴキブリ、蚊などの小さな虫が建物内に侵入し、室内に大量の死骸が発生したり、建物内に住みついたシロアリなどの害虫やハクビシンなどの小動物が躯体部分をかじり、柱や基礎の一部が欠損することも考えられます。
さらに、空き家の立地や道路の条件によっては売却しようと思っても買いたい人が見つからない「負動産」になってしまうこともあります。
「負動産」とは資産価値が低く、所有しているだけで損をしてしまう不動産のことです。
以下のような特徴があります。
・売りたいと思っても買いたい人がいない(需要がない)
・貸したいと思っても借りたい人がいない(収益性がない)
・維持管理するのに費用や手間がかかる(管理する手間や固定資産税の負担がある)
このように負の財産が「負動産」と呼ばれているのですが、どのような不動産が負の財産になりやすいかというと、
・築年数が40年以上経過し、地価の低い地域に所在する土地と建物
・接道義務を満たしていない、または車が入れない狭い小路に所在する土地と建物
・さびれた別荘地内の土地や建物
・築年数が経過し老朽化した、空き室の目立つ分譲マンション
などです。
特に、地価が低い地域に所在する場合は、建物の解体費用を土地の売買代金で回収できないことが多く、中古住宅として売却することが必須です。
ですが、空き家の期間が長くなると建物の劣化が進んでいて、購入希望者を探すことが非常に難しくなります。
このように空き家になった当時であれば、中古住宅として売却できた不動産でも、老朽化が進んでいくことで建物を解体して売却しなければいけなくなったり、金額を下げて売却する必要が生じ、お手元に残せる金額の少なくなったり、最悪の場合には売るに売れなくなることもあります。
ですが、適切な管理を行うことで、資産価値を保ち、将来的に居住したり、売却することもできます。
近隣とのトラブルになったり、損害賠償の義務を負うリスクを防ぐ
空き家の近隣の住民は、町内に空き家があることを皆さん承知しています。
そして、意外と気にしています。
「○○さんの家、どうするんだろうね?」とか、「もうしばらく空き家だね」とか、
世間話の話題にもされているようです。
また、売却のご依頼を受けて近隣住民に挨拶をすると、「前から少し気になっていた」というご近所さんも多い印象です。
噂話にされる程度であればトラブルになることもないのですが、実際に迷惑に感じているご近所さんもいらっしゃいます。
例えば、
・空き家の庭木がお隣さんの敷地内に侵入し、不快
・庭木が前面道路に大きくはみ出していて通行しづらい
・樹木の枯れ葉が雨どいを詰まらせていて、迷惑
・腐朽した建材が敷地外まで飛び散り、危ない
・コンクリート塀が老朽化していて、倒壊しないか不安
・敷地内から動物の糞尿などが原因の悪臭がして、洗濯物を外に干せない
・強風が吹くと、テレビアンテナが揺れて、危険を感じる
などの不満をお持ちの人もいらっしゃいます。
このような近隣住民の不満は、実際に売却をするときに噴出することがあります。
売却の挨拶に行ったときに不満を爆発されることもありますし、測量をするときの境界立会いを拒否されるケースもあります。
「今まで我慢して、こちらで対応していた」というのが、ご近所の本音なのだと思います。
近隣住民との関係が悪くならないように、最低限の管理をしなければいけません。
また、建物の外壁や屋根、雨どい、ブロック塀などが破損・落下し、第三者に被害を負わせてしまった場合、その責任は誰が負うことになるでしょうか?
誰も住んでいないのだから、誰も悪くないような気もしますが、違います。
その責任は空き家の所有者が負うことになります。
この責任は民法の717条に規定されており、「所有者責任(工作物責任)」と言います。
この責任の特徴は、所有者が善意無過失でも責任を負わなければいけないことです。
つまり、「忙しくて空き家の様子をしばらく確認できておらず、建物の状況が悪いことを知らなくても所有者に責任がある」という規定です。
屋根や外壁が落下して人に激突するなど、最悪の事態にならないように空き家がどのような状況なのか定期的に確認して、必要な部分は補修を行い、事前にトラブルを回避する必要があります。
「危険な箇所はないか」「事故につながりそうな箇所はないか」をしっかりと把握し、
必要な修繕をすることで、危険を回避する必要があるということです。
空き巣や不法侵入などの犯罪被害にあう可能性を下げられる
空き家は敷地内に人の目がなく、草木が生い茂って外からの人の目が届きづらいため、空き巣や不法侵入などの犯罪の被害に遭いやすくなります。
空き家を狙った空き巣の被害は、警察庁が統計を取り始めた2020年から4年間で約2.5倍になり、発覚している事件数だけでも8000件を超えています。
人目につきにくく、物色しやすく、被害が発覚するのに時間がかかることが空き家をねらう理由だそうです。
ご相談いただくお客様の中にも空き巣の被害に遭った人が多くいらっしゃることから、私自身も身近な問題に感じています。
多くの空き家が空き巣の被害にあっており、空き家を管理するうえで対策が必須です。
庭(敷地内)を確認・管理するときのポイントとは?
建物の外回りの庭などを確認・管理するときには、
・草木が伸び放題になっていないか?
・樹木の枝がお隣や道路にはみだしていないか?
・雨どいや側溝に敷地内からの落ち葉が詰まっていないか?
・庭に木材やごみなどが放置されていないか?
・猫や他の動物の糞尿や、異臭はしないか?
・ポストに投函物がたまっていないか?
このようなポイントを押さえつつ、管理をすることが必要です。
こちらのポイントを押さえて管理をしていただくことで、
・外から見たときの景観が良くなり、犯罪者から「空き家」だと認識されづらくなる
・樹木からの落ち葉が住宅の雨どいや道路の側溝に落ち、詰まりなどのトラブルを防ぐ
・木材やごみから害虫が発生しづらくなり、住宅の劣化を防ぐ
・野良猫や野生の小動物が敷地内に侵入するのを防ぎ、ふん尿の異臭を防ぐ
などのメリットがあります。
庭の草木が延び放題だと、景観が悪くなるのはもちろんなのですが、
近隣に多大な迷惑をかけるケースや空き巣から「空き家」だと思われやすくなります。
警察官がいわく、窃盗犯は「敷地を雑草がおおっているか、郵便受けにチラシがたまっているか」を確認することで空き家かどうかを判断しています。
つまり、
・敷地内に雑草が生い茂っている状態を作らないこと
・郵便受けにチラシがたまっている状態を作らないこと
この2つを解決できれば、空き巣に狙われづらい環境を作り出せます。
ただし、敷地内の樹木の剪定やチラシがたまらないようにしても、空き巣に入られる可能性をゼロにすることはできません。
犯罪の被害にあわないための他の対策方法として考えられるのは、
・全ての窓と玄関ドアの施錠を確実に行う
・警報アラートを取り付ける
・窓や玄関ドアに補助錠を取り付ける
・センサーライトを玄関先に取り付ける
・防犯砂利を敷く
・警備会社と契約する
などがあります。
木の枝が塀を越えて隣の住宅や道路にはみ出し、落ち葉がお隣の土地や道路、側溝などに落ちたままになるケースもあります。
落ち葉は住宅の雨どいを詰まらせるなど、雨漏りや建物を劣化させる原因にもなります。
また側溝では、その地域の雨水が処理されているため、
側溝の一部に詰まりがあると、流れが遮断されてしまい、町内全体に迷惑をかけることになってしまいます。
さらに樹木によっては、幼虫などの害虫が発生することもあります。
庭に放置された枝などの木材にシロアリが住み着き、建物に移動することで建物を傷めてしまうこともあります。
庭に猫などの糞尿が放置され、異臭が発生するケースも同様です。
遠方の方で、「頻繁には来れないけれども、費用もあまりかけたくない」という方は、シルバー人材センターなどを利用して庭の草木の剪定を依頼すると、民間の業者に依頼するよりも安く済ませることができます。
また、何かあったときにご連絡をいただけるように、近隣の方への挨拶は必ずしましょう。
そのときに自宅か携帯電話の番号と、自宅の住所は伝えるようにしましょう。
建物の屋根や外壁などを確認・管理するときのポイントとは?
建物の外回りは以下の部分を確認してください。
・屋根
・外壁
・雨どい
・門・塀
・テレビアンテナ
劣化が原因で落下しそうな部分をあらかじめ確認して、補修が必要な部分は落下しないように補修したり、撤去するなどの対応が必要です。
屋根
屋根には、瓦・トタン・スレートがあります。
瓦の場合は、ずれている部分がないか、欠けている部分がないか、確認します。
トタンの場合は、めくれがないか確認します。
スレートの場合は、ひび割れや反りがないか確認します。
ただ、確認するといっても、屋根に上るのは危険です。
できれば、少し離れたところから双眼鏡などで確認してください。
また、屋根は釘などで固定しています。釘も経年劣化すれば、錆びます。
固定している金物がさびれば、屋根材がずれたり、めくれたりすることは、どうしても起こってしまいます。
30年くらい屋根の葺き替え工事をやっていない場合は、修繕することをお勧めします。
外壁
外壁には、モルタル壁・タイル壁・トタン壁があります。
こちらも屋根と同じような確認方法で、眼で見て確認します。
■モルタル壁
モルタル壁は、下地の板にセメント+砂+水を練り合わせたモルタルを吹き付けた壁です。
耐久性は高いですが、耐水性が低いのが特徴で、経年すると下地とモルタルが剥離して膨らんだり、ひび割れたり、最悪の場合には落下したりします。
■タイル壁
タイル壁は、分譲マンションなどの外壁に利用されている壁材です。
まれに一般の住宅でも利用されています。
接着剤を使って、下地に貼り付けるのですが、経年で接着剤が剥離し、タイルが落下することがあります。
■トタン壁
トタン壁は、最近だとガルバリウム鋼板が有名ですが、屋根材としても利用されているものです。
こちらも屋根のときと同じように、固定している釘などが劣化すると、めくれの原因になります。
雨どい
雨どいが外れていないか、雨どいを固定している金物が外れていないか、確認します。
外れていると、落下や外壁からの雨漏りの原因にもなります。
門・塀
門柱などの腐食、コンクリートブロックのひび割れがないかどうか、確認します。
特に、塀は敷地の内と外の境界近くにあるものです。
劣化している塀は、地震などで倒壊する危険があり、通行人に怪我を負わせてしまう可能性も高くなります。
費用はかかりますが、程度が悪ければ修繕をするか、撤去することをお勧めします。
テレビアンテナ
まれに屋根の上のテレビアンテナが倒れている住宅を見ることがあります。
本体の劣化と台風や暴風雨の影響だと思うのですが、鉄のかたまりが道路などに落下するのを想像すると、恐怖しかありません。
アンテナをしばらく利用する機会がないようでしたら、撤去したほうが安心です。
毎年、台風が来るたびに心配になるのも、何だか嫌ですよね。
また、アンテナとは別になりますが、敷地内に風で飛ばされてしまうようなものは放置しないようにしましょう。
建物の資産価値を維持するための管理方法とは?
「今は首都圏に住んでいるけど、将来的には実家に戻ってのんびり生活したい」
「将来的には、子供などの親族に住んでもらいたい」
このようなご希望をお持ちの方は、将来的にも住めるように設備が利用できるよう維持する必要があります。
建物は人が住まなくなると、急速に劣化します。
誰も住んでいないと、給排水の設備を使うことも、窓を開けて換気することもなくなってしまうことが原因です。
また、誰も住んでいないと建物の不具合に気づきにくくなります。
屋根や外壁などから水漏れがあると、構造上の主要部分が傷み、住むことができなくなったり、リフォームに多額のお金がかかってしまうことにもなります。
定期的に空き家へ行ってメンテナンスをすることで、劣化の進行を遅らせることができますが、下記の部分にご注意をいただいて、メンテナンスしてください。
また、管理作業の頻度はできるだけ多いに越したことはありませんが、
最低ひと月に一度は実施したほうがよいです。
・通気・換気
・給湯器の凍結防止
・悪臭予防のための汲み取りや排水口の処理
・畳の湿気予防
通気・換気
通気や換気をしないと、結露などによる湿気で建物が傷んだり、室内に湿気が貯まって、カビが生えたり、シロアリが発生したりすることがあります。
結露の原因は、主に「室内外の寒暖差」と「室内の湿度」です。
季節によって、寒暖差と湿度が違いますので、換気の方法も違います。
夏場だと、昼間は高温・多湿のため、できれば気温が下がる夜間に、冬場だと、天気の良い日中に換気・通気をしたほうが良いです。
また、換気には換気扇を使う方法もあります。
電気の契約を残したままにしておいて、換気扇を付けっぱなしにする方法です。
ですが、換気扇で連続換気する方法は、雨の日に湿度を室内に取り込むことになります。
新潟のような雨の日が多い地域では、逆に結露ができやすい環境を作ってしまうことになりますので、できれば止めたほうがいいです。
室内から湿気を追い出すようなイメージで換気をしてください。
給湯器の凍結防止
給湯器は、水をお湯に替える機械です。どの住宅でも設置されています。
室外に付いているタイプと、室内についているタイプの2つがあるのですが、室外に付いているタイプの場合、冬場に給湯器が凍結しないように対応する必要があります。
凍結で破損すると、配管の修理には数万円、本体をまるごと交換すると20万円前後かかり、費用がバカにならないからです。
凍結を防止する方法は2つあり、
・電気契約をして、給湯器本体の凍結防止機能を利用する
・給湯器本体の配管の水抜きをする
どちらかの方法を使います。
■凍結防止機能を利用する
現在の給湯器の多くには凍結予防ヒーター機能と自動ポンプ運転機能が付いています。気温が下がると、自動的に作動して本体や配管の凍結を防止してくれます。
ただし、電気の契約をしなければいけないことと、追い炊き機能がついている場合は浴槽の循環金具より5cm程度以上、水をためておく必要があります。
■給湯器本体の水抜きをする
給湯器内の水を抜き、凍結しないようにする方法です。
電気契約が不要になることがメリットです。
手順ですが、給湯器本体側と、浴槽側でそれぞれ操作が必要です。
水抜きのときの参考にしてください。
■給湯器側
①給湯器のリモコンの運転スイッチを切って、ガス栓(1)、給水の元栓(4)を閉める
②建物内の給湯栓(5)(キッチンや洗面台も含む)を全て開ける
③給湯器の給水水抜き栓(6)、給湯水抜き栓(7)(8)を開ける
※これで給湯器とつながった給水管の中の水が、全て外に出ることになります。
■浴槽側
①浴槽の水を排水する
②リモコンの運転スイッチを入れて、「おいだき」のスイッチを押す。(浴槽の循環金具から水からお湯が出ていることを確認)
③②で水かお湯が出切ったあと、運転スイッチを切る
④給湯器のふろ往水抜き栓(2)・ふろ戻水抜き栓(3)、ポンプ水抜き栓(9)、ふろ水抜き栓(11)を開ける。
⑤中和器水抜き(10)を開けて完全に排水する
⑥給湯器の電源プラグを抜く
給湯器によっては水抜きの方法も違うかもしれません。
できれば取扱説明書をご覧いただくか、メーカーまでご確認ください。
有料にはなりますが、北陸ガスなどの業者でも対応してくれます。
給湯器側の水抜き方法
浴槽側の水抜き方法
悪臭予防のための汲み取りや排水口の処理
トイレやキッチンの排水に浄化槽や汲み取りを利用している住宅の場合には、室内に悪臭が充満することを予防するために、汲み取りをしてもらいます。
浄化槽の場合は他にも注意点があります。
浄化槽は槽内にバクテリアを培養することで汚水を浄化する仕組みで、ブロアーという装置で浄化槽に酸素を供給することで、バクテリアが死なないようにしています。
浄化槽を利用している住宅の電気の契約を解約してしまうと、ブロアーから酸素が供給されなくなり、浄化槽の中のバクテリアが死んでしまいます。
しばらく住宅を利用しないのであれば、バクテリアが死んでしまうことを承知の上、
電気を解約する方法もあります。
そんなときは、新たに活用するタイミングでバクテリアを入れなおします。
ただ費用もかかりますので、電気契約を継続するか、ご自身でご判断をいただければと思います。
また、排水口の処理ですが、トイレやキッチンの排水トラップの水が蒸発しづらくなるような工夫が必要です。
排水トラップとは、水廻りの排水配管の一部に水をためて、臭気などが室内に上がってくることを防ぐための構造のことです。
トイレの便器に水がたまっているのも、排水トラップの一種です。
排水の配管は、下水道と直接つながっているため、遮断してあげないと、下水道から悪臭やガス、虫などが室内に侵入してきてしまいます。
そのような状況にならないように、排管の途中に水をためるスペースがあり、水で排管にふたをしています。
排水トラップの水ですが、空き家にしておくと蒸発してなくなってしまいます。
水がなくなると、お伝えしたように、悪臭や虫などが室内に侵入します。
できれば一定の頻度で水を流すことで、排水トラップの水がなくならないようにしてもらいたいところです。
ですが、遠方にお住まいの方にとっては、大変な作業だと思います。
そんな方は、水が蒸発しづらいように、排水口部分にラップをしましょう。
こちらは浴室の排水口にラップをした写真ですが、トイレやキッチンにもラップをすることをお勧めします。
畳の湿気予防
湿気予防のために、畳は上げましょう。
マイナスドライバーを畳と畳の隙間に当て、下まで押し込み、てこの原理を利用して押し上げます。
指が入る程度まで押し上げることができたら、あとは指を入れ込み、手で畳を上げることができます。
可能でしたら、天日干しをしてから室内の日当たりが良さそうなところに立てかけて保管しましょう。
空き家に火災保険をかけるべき?
空き家の管理に関連することとして、火災保険について説明しようと思います。
まず、私の考えとしては長期で空き家にする可能性がある場合、
火災保険には加入したほうが良いと思っています。
理由は、所有者(工作物)責任のリスクを回避するためです。
ただし、下記の2つのポイントに注意が必要です。
・一般的な住宅用火災保険よりも割高であること(2倍位します)
・空き家の保全状況によっては、保険会社から加入自体を断られるケースがあること
以上の2つです。
実は空き家が加入できる保険は、かなり限られています。
皆様がご自宅へかけている一般的な住宅用火災保険に加入できることは、ほとんどありません。
また、県民共済などの火災共済は空き家を対象にした火災保険の引き受けがなく、保全状況が悪い空き家の引き受けを断る保険会社もあります。
保険に加入できても、一般的な住宅用火災保険よりも割高な保険料が設定されていることが多いです。
空き家が加入できる火災保険が、事務所や店舗などを対象にした一般物件を対象にした保険だからです。人が生活している住宅物件よりも保険料が高額に設定されています。
火災保険に加入する場合は、ご自身の所有している空き家の保全状況や周辺環境に合わせて、必要最低限の内容で補償を受けることで、保険料を節約する方法もあります。
損害賠償責任に備えた「賠償責任特約」の付帯は忘れずに行うようにしてください。
電気・ガス・水道の契約はしておいたほうが良い?
空き家の所有者さんから今後の活用についてご相談をいただくと、
かなりの割合で電気と水道の契約をしている方がいらっしゃいます。
私の考え方ですが、
・将来的にご自身か、ご親族が活用する予定があったり、賃貸する場合は、
管理作業のためにも、電気と水道の契約をしたほうが良い。
ガスは利用するときだけ契約し、それ以外の時は閉栓する
・数年以内に売却予定がある方で、建物の築年が昭和56年5月31日以前で、
3000万円控除を利用できる場合は、無理に電気と水道の契約をしなくても良い
と考えています。
将来的に活用する場合は、通水や室内の換気・清掃などの管理が必須です。
月に1回か2回の管理の作業で、公共料金は1月3,000円くらいかかるかと思いますが、
管理不良で設備に不具合があった場合の費用負担を考えると、
水道料金と電気料金の負担は、必要経費として考えたほうが良いと思います。
ただし、近い将来に売却するかもしれない場合は、無理に契約をしなくても良いと思います。
特に3000万円控除を利用できる条件が整っている住宅の場合は、
建物を解体したほうがお手元にお金を多く残せますし、
取り壊す予定の建物のために、毎月の公共料金を負担するのは大きな負担になってしまいます。
家財の整理が終わったら、電気・水道の契約を切ってしまっても、
将来的に問題はないのではないでしょうか。
まとめ
空き家を適切に管理することで、
・特定空き家・管理不全空き家に指定され、固定資産税が増えることを防ぐ
・資産価値を保ち、安価に手放してしまうことを防ぐ
・近隣とのトラブルになったり、損害賠償の義務を負うリスクを防ぐ
・空き巣や不法侵入などの犯罪被害にあう可能性を下げられる
以上のようなメリットがあります。
ただし、適切な管理をするためには、不具合箇所の補修や管理作業をするための時間、毎年の固定資産税、電気・水道などの公共料金など、さまざまな費用の負担があります。
今後、利用する予定がない、管理するのが難しい人は思い切って活用することをおすすめします。
「賃貸・売却のうち、どちらの活用方法が良いか判断する方法」や、「売却するときの流れや注意点」、について詳しく解説した記事を以下のリンク先に掲載しました。
ご興味のある人は参考にご覧になってください。