「不動産を売却する年の固定資産税は誰が負担するの?」
毎年、負担のある固定資産税。
ですが、不動産を売却する場合、その年の固定資産税は誰が負担するのでしょうか?
こちらの記事では、不動産を売却する年の固定資産税の負担について解説をしました。
この記事を読んでいただくと、こんなことが分かります。
・売却する年の固定資産税を誰が負担するのか?
・固定資産税の精算方法とは?
・固定資産税の精算金を受け取るときの注意点
目次
■不動産を売却したときの固定資産税は誰が支払う?
・固定資産税を精算するときの起算日とは?
・固定資産税の精算金の計算方法
■固定資産税の精算金の注意点
・固定資産税の精算金は税金ではなく、売買代金の一部と見なされます
・固定資産税の精算金は消費税の対象になります
■まとめ
不動産を売却したときの固定資産税は誰が支払う?
固定資産税の納税義務者は、その年の1月1日時点の所有者になります。
年度の途中で売却をしても、売主(1月1日時点の所有者)には固定資産税を納税する義務があります。
ただし、不動産を売却した年の固定資産税を、1月1日時点の所有者である売主が全額負担するのは不公平です。
そのため、不動産売買の慣習では、売主と買主の間で現金で日割りで精算することが一般的な方法です。
法律で決まっているわけではなく、不動産の売買契約の内容に従って精算していくことになります。
固定資産税を精算するときの起算日とは?
売却した年の固定資産税は「引き渡しの前日までを売主が負担、引渡し日以降を買主が負担」という形で日割りで精算します。
その際に注意する点は、固定資産税の起算日です。
固定資産税は1月1日時点の所有者に課税されるものですが、
行政の会計年度の始期である4月1日以降に所有者あてに納税通知書が郵送で届きます。
そのことから固定資産税を「4月1日から翌年の3月31日」までの分と思い込んでいる人がいらっしゃいますが、厳密にはいつからいつまでの分という法律上の決まりはありません。
そのため、いつからいつまでの分を売却年の固定資産税として扱うか、
契約書面上で明記します。これが起算日です。
起算日には2種類あり、
・「1月1日」とする場合と、
・「4月1日」とする場合があります。
例えば、1月1日とした場合は精算する固定資産税は1月1日から12月31日までの分になりますし、4月1日とした場合は4月1日から3月31日までの分になります。
商慣習上、関東圏より東側の地域では起算日を「1月1日」にし、
関東圏よりも西側では起算日を「4月1日」にすることが多いです。
新潟市の場合は1月1日を起算日にします。
固定資産税の精算金の計算方法
起算日ごとの固定資産税の精算金の計算方法を説明します。
固定資産税の金額が12万円、6月30日に買主へ引渡しをするものとお考え下さい。
起算日によって、固定資産税の精算金が異なります。
【起算日が1月1日の場合】
売主が負担する金額 59,178円
計算式 120,000円 × 180日(1月1日から6月29日までの日数)÷ 365日
買主が負担する金額 60,822円
計算式 120,000円 × 185日(6月30日から12月31日までの日数)÷ 365日
【起算日が4月1日の場合】
売主が負担する金額 29,589円
計算式 120,000円 × 90日(4月1日から6月29日までの日数)÷ 365日
買主が負担する金額 90,411円
計算式 120,000円 × 275日(6月30日から3月31日までの日数)÷ 365日
起算日を「1月1日」か「4月1日」のどちらにしても、売主が負担するのは引き渡しの前日まで、買主が負担するのは引渡し日当日からになります。
固定資産税の精算金の注意点
不動産を売却した年の固定資産税は売主と買主の間で日割りで精算することをお伝えしましたが、受け取る際の注意点についてお伝えします。
固定資産税の精算金は税金ではなく、売買代金の一部と見なされます
不動産を売却したときに購入時よりも高額で売却できると、売却益に対して一定の税率で税金の納税義務が発生します。
税金は売却した翌年に確定申告をして納税することになりますが、買主から受領した固定資産税の精算金は売買代金(譲渡所得)の一部と見なされます。
例えば、売買代金が1000万円で固定資産税の精算金が5万円の場合、買主より合計1005万円を受領しますが、1000万円ではなく1005万円が税金を計算するうえでの譲渡所得と見なされてしまいます。
変な感じですが、税法上(法律上)のことになりますので、そういうものだとお考えいただくしかないです。
固定資産税の精算金は消費税の対象になります
買主から受領する固定資産税の精算金に消費税がかかる場合があります。
上記でお伝えしたように、固定資産税の精算金は税金ではなく、売買代金の一部だからです。
ただし、必ずしも消費税がかかるわけではありません。
どのようなケースだと消費税がかかるかというと、売主が課税事業者である場合です。
個人が自分の自宅や相続した実家を売却する場合は事業者という立場での売却ではないため、消費税はかかりません。
個人名義であっても、事業目的で所有している共同住宅やテナントを売却する場合は消費税の課税対象になります。
また、消費税が課税されるのは建物のみで、土地は課税されません。
固定資産税の精算方法は契約書に明記してもらう
固定資産税の精算方法は契約書に具体的に明記してもらいましょう。
あいまいな内容のまま契約してしまうと、後々トラブルになることも考えられます。
具体的には「固定資産税の年額」「起算日」「売地の場合は契約の時点で土地上にある建物分の固定資産税の負担」などです。
いつからいつまでの分を誰がいくら負担するのか明記することで、トラブルを事前に防ぐことができます。
よくあるトラブルは、1月1日から3月31日までの間に引き渡しをするケースです。
固定資産税の納税義務者は1月1日時点の所有者であるため、引き渡し後に固定資産税の納税通知書が行政から売主に届きます。
これにより、「引き渡したのに、なぜ私(売主)が支払わなくてはいけないのか?」など、誰が支払うべきかについて再度議論が生じることがあります。
このトラブルを未然に防ぐためには、契約書に必要な文言を盛り込むことが必要です。
まとめ
売却する年の固定資産税の納税義務者は売主になります。
売主は全額を納税しましょう。
ただし、売主が全額を負担するのは不公平であるため、売却する年の固定資産税は売主と買主との間で売買代金と一緒に現金で精算します。
起算日をいつにするかで精算金の金額が異なりますので、不動産会社の担当者に詳細を確認しましょう。
固定資産税の精算金は税金ではなく、売買代金の一部として見なされます。
不動産譲渡所得税や消費税の対象になるため、確定申告の時にはその分も含めて申告してください。
また、後々のトラブルを防ぐためにも、売買契約書には固定資産税を誰がどのくらい負担するのか、必ず明記してもらうようにしましょう。