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不動産活用情報

今回は、「契約不適合責任」について説明をさせていただきます。
令和2年に民法改正で、以前は「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」と呼ばれていたものが、契約不適合責任と呼ばれる事になったのですが、その内容を説明します。

契約不適合責任(瑕疵担保責任)は不動産を売却するときにとても重要なキーワードです。
これを機会に頭の片隅に置いておいて下さい。

こちらの文章を読んでいただくと、

  • 瑕疵とは何?
  • 契約不適合責任とは?
  • 告知書とは?
  • 売主の契約不適合責任を免責にできないケースとは?

以上のことについてご理解いただけます。

瑕疵とは何?

瑕疵とは、隠れた欠陥という意味です。

瑕疵には、物理的なものだけではなく、心理的なもの(事件・事故・自殺等)もあります。

具体的にどんなものがあるかというと・・・、

(売り家や売りマンションの場合)
・雨漏り
・白蟻の被害
・建物の傾き・腐食・不具合
・給排水施設の漏水
・増改築の有無
・火災・浸水の被害

(売り地の場合)
・境界・越境について
・土壌汚染
・地盤の沈下や軟弱
・旧建物の基礎や浄化槽・建築廃材などの敷地内残存物
・近隣の建築計画
・電波障害
・ごみ処理場や暴力団事務所・火葬場など、周辺に影響を及ぼすと思われる施設の存在
・騒音や振動、臭気など
・事件や事故や自殺など

列挙すると、非常にたくさんの項目が瑕疵に該当します。
購入する人の感性によっては、これ以外の項目でも瑕疵だと感じることもあります。

契約不適合責任とは?

契約不適合責任は不動産の種類や品質等が契約内容と相違していた時に、売主様が買主様に対して負う法的な責任です。
契約不適合責任も以前の呼び名の瑕疵担保責任も、購入する側にとっては「保証」のような存在です。
引き渡した後に何かあった場合、売主様へ保証してもらえる仕組みです。

民法が改正される前の「瑕疵担保責任」のときには、購入後の保証の範囲が「瑕疵」、つまり購入者が通常の注意で気づかない隠れた欠陥の部分のみでしたが、改正後の「契約不適合責任」では、保証範囲が大きく広がりました。
売主様にとっては責任が大きくなったと言えます。

保証範囲がどの程度変わったかというと、「買主が通常の注意で知り得ない隠れた欠陥のみ」から、「引き渡された目的物が、種類、品質、または数量に関して契約の内容に適合しない部分」まで、保証の範囲が広がりました。

以前の瑕疵担保責任のときには、買主様側が契約前に瑕疵を知らなかったことを証明する必要がありましたが、現在の契約不適合責任では、契約の内容に適合していなければ、買主様が売主様へ保証を求めることが出来るようになったということです。

例えば、雨漏りがあると事前に通知のない住宅を買主が購入したあとに、雨漏りがしていることが発覚した場合、売主様が善意無過失で知らなかったとしても、自己負担で修繕をする必要があります。

かなり重い責任です。
ここまで重い責任を負わなければいけないとなると、中古住宅を売却することをためらう所有者様もいらっしゃるかと思います。

建物があることで引き渡し後のリスクを負うのであれば、建物を取り壊して売却したほうが気持ちもスッキリすると考えると方もいらっしゃるかと思います。

ただ、この契約不適合責任は、売主様が必ず負わなくてはいけないものではありません。

契約不適合責任は民法によって規定されているのですが、民法は当事者間で任意に取り決めを行うことができ、それが有効に機能します。

つまり、

・契約不適合責任を売主様が持つかどうか
・契約不適合責任の範囲をどの部分にするか、
・契約不適合責任の期間をどの程度にするか、

これらは契約をする当事者である、売主・買主のあいだで自由に決めることができます。
契約書の内容次第という感じです。

実務では、築年数が20年程度の築浅の住宅やマンションの場合には、

・売主の契約不適合責任の期間は3ヶ月程度、
・範囲は雨漏り・白蟻の被害・建物構造上主要な部位の木部の腐食・給配水管の故障のみ、

で設定することが多く、

30年以上の築年数の住宅やマンション・土地の場合は、

売主の契約不適合責任を免責(責任を負わない)することが多いです。

免責事項を設定しない契約は、売主様にとってリスクでしかありません。
特に、中古の住宅を売却する際には注意してください。

告知書とは?

告知書とは、売主様が知っている範囲で、物件のマイナスポイントについて申告をしてもらう用紙です。
一部を抜粋して下に掲載します。

先ほど説明をした、瑕疵の具体的な項目について、「知っている・知らない」、「知っているなら具体的にどんなものか」を売主さんに記入してもらって、買主さんに提出してもらう書類です。

この書式に記入してもらった事項に虚偽の記載があった場合は、場合にもよりますが、損害賠償や、程度によっては契約解除の対象になります。

隠しても良いことはありません。
特に、事故や自殺などの心理的瑕疵については、周辺の住民の方から買主さんの耳に簡単に入ってしまいます。

私も売却依頼を受けた物件については、必ず近隣住民へ聞き込みをします。
知っていることは、そのままご記入いただければと思います。
その条件でご納得いただけるお客さんを探しますので、ご安心下さい。

売主の契約不適合責任を免責にできないケースとは?

契約不適合責任の有無や、その内容については自由に決められると説明しましたが、
消費者保護の観点から、売主の瑕疵担保責任を免責できないケースがあります。

購入する方にとっては非常にありがたいルールですが、売る側にとっては何とも言えないルールです。

どんな場合かと言うと、

売主が法人や個人事業主などの事業者で、
事業で利用していた不動産を個人の自宅利用の買主さんへ売る場合です。

※他にも、売主が宅建業者や建築業者の場合も免責にならないのですが、こちらのニュースレターでは説明を割愛させていただきました。

売主さんが事業者である場合

売主さんが事業で利用していた不動産を個人の自宅利用のお客さんに売却する場合、
売主さんの契約不適合責任の全部を免責することはできません。

例えば、賃貸物件として賃貸したマンションを、借主が退去した後で、そのマンションを個人のお客さんが自宅として利用するために購入する場合、売主の契約不適合責任の全部を免責するような契約は無効です。

このルールは消費者契約法という法律に基づくもので、消費者を保護することが目的です。

購入するのが不動産業者や事業者の場合には、瑕疵担保責任の免責ができます。
不動産業者は個人ではなく、事業者だからです。

個人の方が購入する場合には、一定の期間、なにかしらの契約不適合責任を負担しなければなりません。

皆様の中には、自宅として利用していた住宅を、転勤などの理由で1度賃貸して、借主が退去したタイミングで売却する方もいらっしゃると思います。

この場合に売主さんが事業者に該当するかどうかですが、事業者に該当するという判例と、該当しないという判例があり、正直、私としても対応に困っているような状況です。

さまざまなリスクを考えると、一定の責任を負った契約をしたほうが良いと、私は考えています。

まとめ

今回は契約不適合責任について説明をしました。

個人の方が、自宅や相続した財産を売却するときには、あまり関係ないことなのですが、事業として不動産賃貸業を行っている方や、1度賃貸に出したことがある住宅を売却する場合には、契約不適合責任は切っても切れないものです。

「そういうルールなんだ」と割り切って臨んでいただく以外にはないのかなと思います。

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