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今回も前回の話の続きで、媒介契約の締結についての注意点について説明します。

ちなみにですが、不動産売却の流れは、簡略化すると、下のような時系列になります。

査定依頼

媒介契約の締結・売り出し価格の設定

販売活動

お客さんからの買い付け(申し込み)・契約手続き

決済・引き渡し

媒介契約の締結は上から2つ目の部分で、どの契約を選ぶかで売買の成果が変わることもあります。
売主さんにとって、最も重要な選択と言っても良いと思います。

こちらの記事を読んでいただくと、

  • 媒介契約とは?その種類は?
  • (専属)専任媒介契約と、一般媒介契約のメリット・デメリットとは?
  • 専任媒介契約のリスクである「囲い込み」とは?

以上のことについてご理解をいただけます。

媒介契約とは?その種類は?

媒介契約とは、売主さんの売却の意思を書面上で確認する作業です。
また、売主さんと不動産業者との間のルールを明文化する作業でもあります。

媒介契約には種類があります。
どの種類の媒介契約を選ぶかで、その後の売却がうまくいくかどうか左右されることもあります。すごく重要な選択です。

それぞれの媒介契約の内容を理解してもらって、ご自身の状況に合った契約をしてください。

決して不動産業者の言いなりになって、媒介契約を結ばないように注意してください。

それでは、媒介契約の種類について説明したいと思います。全部で3種類です。

専任媒介契約

売却を1社の不動産屋にのみ依頼する契約です。
他の不動産会社に重ねて売却依頼することができません。

つまり、売却の際の窓口はひとつの不動産屋に限定されます。

不動産会社は、この契約を締結した日から7日以内に、レインズ(不動産業者しか閲覧できない不動産情報のサイトです)に物件情報を登録して、他の不動産業者も情報を閲覧できるようにしなければいけません。

また、販売活動についての報告を、2週間に1度の頻度で、不動産業者の担当者から売主さんにする義務があります。

売主さんが自分で見つけてきた買主さんがいる場合、不動産業者を仲介に入れて契約をする必要はありません。

契約期間は最長で3ヶ月で、これ以上の長さの契約期間を設定することは法律上できません。

専属専任媒介契約

先ほどの専任媒介契約よりもさらに制限が強い契約です。
もちろんひとつの不動産屋のみが窓口となります。

専任媒介契約では自分で見つけた買主さんと契約をする場合、不動産屋を通す必要はありませんでしたが、

こちらの契約では、自分で見つけた買主さんでも不動産屋を通す必要があります。
つまり、専属専任媒介契約では、自分で購入者を見つけた場合でも、仲介手数料がかかります。

指定流通機構への登録の期日や、業務報告の頻度も、専任媒介契約に比べると、短い期日となっていますが、それ以外の部分に関しては、ほとんど同じ内容の契約です。

一般媒介契約

複数の不動産会社に同時に売却依頼をすることができる契約で、自分で見つけてきた買主さんとも不動産屋を通さず直接契約することができます。

また、不動産業者にとっては、指定流通機構への登録の義務はありません。
販売状況の報告の義務もありません。

複数の不動産屋が窓口となり売主さんと直接取引を行えます。
契約期間は基本的には3カ月以内になります。

それぞれの媒介契約の違いを表にすると、下のような形になります。

3つの契約のことを簡単にお伝えすると、

一般媒介契約→専任媒介契約→専属専任契約 の順で、

不動産業者1社への売主さんの依存度が高くなっていきます。

不動産業者の私が言うのもなんですが、
専任媒介契約と専属専任媒介契約の2つの媒介契約は、不動産業者にとって非常に都合の良い契約になっています。

売主さんの窓口の不動産業者が一社のみになるということは、将来的には、ほぼ間違いなく売主さんから仲介手数料をもらえるからです。

仲介手数料は売主さんと買主さん、それぞれからいただけるもので、成約時にいただく成果報酬です。

売主さん・買主さんをひとつの不動産業者が単独で仲介して、1社がそれぞれから報酬をもらうことを「両手取引」といいます。

売主さん・買主さんを2つの不動産業者が仲介して、1社は売主さんから、もう1社は買主さんから仲介手数料をもらうことを「片手取引」といいます。

このように、(専属)専任媒介契約を締結するということは、不動産業者にとっては、媒介契約を解除されない限り、売主さんからもらえる「片手分の仲介手数料」が確定したのと同じ意味合いがあります。

これは私の憶測ですが、3つの媒介契約が宅地建物取引業法という法律上あり、そのうちの2つは、不動産業者にとって、都合が良い契約内容になっているのは、不動産業者への忖度であるように感じています。

(専属)専任媒介契約と、一般媒介契約のメリット・デメリットとは?

不動産業者の立場なのに、(専属)専任媒介契約を悪者のように説明してしましたが、それぞれの媒介契約には、メリット・デメリットがあります。

一般的には、下のようなメリット・デメリットがあると言われています。

まずは、(専属)専任媒介契約です。

メリットは、

  • 不動産業者には販売状況の報告義務があるため、販売状況を具体的に確認でき、今後の対応について、検討できる。
  • 不動産業者にとっては、将来の報酬が期待できるため、一般媒介契約の物件に比べて、積極的に広告費用をかけるなどの販売活動ができる。

デメリットですが、

  • 1社のみが窓口になるため、担当者の実力次第では、売買の結果に大きな差が出る。
  • 囲い込みをされるリスクがある。(こちらについては、のちほど具体的に説明します)

次に、一般媒介契約です。

メリットは、

  • 売主さんは複数の不動産業者に並行して売却依頼ができるため、見込み客の幅が広がる。
  • 並行して依頼された複数の不動産業者同士の競争意識が働き、営業活動が積極的になる。

デメリットは、

  • 不動産業者は販売状況の報告義務がないため、どのような状況になっているのか、確認できない。
  • 将来の報酬が保証されていないため、積極的に広告費用をかけるなどの販売活動がしづらい。
  • レインズへの登録義務がないため、物件情報が他の不動産業者へ共有されづらい。

 

それで、「結局どれを選べば一番いいの?」ということになると思うのですが、
私のお勧めは、

(専属)専任媒介契約に向いている売主さんは、

  • 信頼できる不動産業者の担当者に出会えた人
  • 慣れないことなので、お任せしたい人
  • 仕事の都合等の理由で、複数の不動産業者とやり取りをする時間が取れない人

です。

一般媒介契約に向いている売主さんは、

  • 積極的に不動産売買に関わりたい人
  • どの不動産業者の担当者も、信頼に欠けると感じた人

それが私のお勧めです。

ただ、不動産業者のほとんどは、専任媒介契約の締結をお勧めしてくると思います。
私も専任媒介をお願いします。

専任媒介契約のリスクである「囲い込み」とは?

(専属)専任媒介契約のデメリットを説明する際に、「囲い込みのリスクがある」ということをお伝えしました。

囲い込みとは、売主さんから売却依頼を頂戴した不動産業者が、他の不動産業者から仲介に入られないように囲い込む、妨害行為です。

レインズなどのサイトで物件情報を見た他の不動産業者が売主さんの物件に問い合わせをしても、売主側の仲介業者は「この物件は商談中です」とか「申し込みが入りました」などの嘘をつき、他の不動産業者が買主を仲介することを妨害するのが、囲い込みです。

つまり、物件情報が他の不動産屋に一切オープンにされなくなってしまいます。
囲い込みをされると、他の不動産屋からの見込み客の紹介が一切なくなります。
これでは、いつまで経っても契約をしたいというお客さんが現れません。

囲い込みは法律でも禁止されている、れっきとした違法行為です。

(専属)専任媒介契約を締結した不動産業者の多くは、さらに両手取引を狙います。

不動産業者が頂戴する仲介手数料は、成約時にのみもらえる成果報酬です。
1社のみで売主さん・買主さんを仲介した時は両手取引と言い、1社がそれぞれ、売主さん・買主さんから仲介手数料をいただけます。

一方、不動産業者2社が仲介した場合は、1社は売主さん、もう1社は買主さんから仲介手数料をもらいます。これを片手取引と言います。

不動産業者にとっては、片手取引でも両手取引でも、仕事量はほとんど変わりません。
自社のみで契約が成立すれば手間はほぼ同じですが、利益は2倍です。

会社である以上は利益を最大化しようとするのは当然のことですし、問題なく契約に至れば、売主さんの利益にも繋がるので、ここまでは全く問題のない内容です。

ですが、囲い込みをしているとなると、話は別です。
囲い込みは売主さんにとって、不利益きわまりない行為です。
売主さんの利益を最大化するのが仲介業務です。囲い込みは、本末転倒な迷惑行為です。

「本当にこんなことがあるの?」と、思うかもしれませんが、一定数の営業担当者がこの手法を使っています。
私も紹介させてもらえなかったことが何回もあります。

会社のやり方として囲い込みをしているというよりも、担当者単位で囲い込みを行っているような印象です。

私の感覚では誰もが知っている大手の不動産業者に多い印象です。
新潟市でも「この業者は囲い込みしているよね」という業者があります。
おそらく給与体系が歩合か、営業ノルマが厳しいのでしょう。

こちらのニュースレターを読んでいただいている方の中に、現在、販売活動中で、なかなかうまくいっていないという人がいらっしゃいましたら、ひょっとしたらこの囲い込みをされているかもしれません。1度確認をすることをお勧めします。

「でもどうやって確認すればいいの?」と思うかもしれませんが、簡単です。
他の不動産業者のふりをして物件の問い合わせの電話をすると、一発でわかります。

電話したのがわかってしまうのが不安だと思いますが、ひとりひとりの電話番号を事務所の固定電話に登録していることは考えづらいです。

どうしても不安なようでしたら、他の誰かの携帯電話から電話するようにしてみて下さい。
囲い込みをされているようでしたら、媒介契約を解除することをお勧めします。

このように両手取引のみを狙っている担当者と専任媒介契約を結んでしまうと、物件の成約に至る時期が遅れてしまったり、最悪の場合には、より低い金額で成約になってしまう恐れがあります。

積極的に販売に関わっても手間を感じない人や、どの不動産業者の担当者も信用に欠けると思った人は、一般媒介契約で数社の不動産業者を窓口にしてオープンな状態で、さまざまな不動産業者のお客さんを広く紹介してもらったほうが良いと、私は思っています。

ただ、仕事などの時間の都合等で1社に窓口をお願いしたい場合や、不動産のことはやっぱりよくわからないからプロにお任せをしたいという人もいると思います。
そういう時は、担当者に「囲い込み」の事実がないかどうか、担当者に確認しましょう。

担当者はそんな言葉を売主さんから聞いたら、勉強をしている人だと思って驚くでしょう。
そういった事実があったとしても、正直に話をすることはないとは思いますが、反応がちょっと怪しいなと思ったら、その担当者には専任で任せないほうが無難です。
ちなみに私は、囲い込みをしません。弊社で囲い込みをしている人もいません。
神に誓ってやっていません。

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