今回は負動産の話をします。
変換ミスじゃないです。「不動産」ではなくて、「負動産」です。
世の中に出回っている数少ない不動産関係の書籍のなかから、情報収集のために、興味を持ったものを時間があるときに読んで勉強しているのですが、最近はこの「負動産」という言葉に出くわす機会が多い気がします。
言葉としても皮肉がこもったような言葉で、なんとなく興味を持ったのですが、今回はこちらの負動産について書いていきたいと思います。
こちらの記事を読んでいただくと、
- 負動産とは一体なに?
- 負動産はお金を払って引き取ってもらうもの?
- 負動産を手放すための方法とは?
- 市町村などへの負動産の寄付はできる?他の人に引き取ってもらう方法は?
以上のことについてご理解いただけます。
負動産とは一体なに?
負動産という言葉は、「相続」というキーワードと一緒に使われることが多く、親の世代から引き継いだ不動産を対象に「負動産」という言葉が使われることが多いようなのですが、その意味を簡単に説明すると、
「所有しているだけでお金が出て行く・または価値がどんどん減っていく、そして処分できない不動産」
という意味で使われることが多いです。
どんな不動産か例を挙げると、
・築年数が経過し老朽化した分譲マンション
・さびれた別荘地内の土地や建物
・農地などの特定の人しか利用できない・買うことができない土地
・地価が低い地域に所在し、築年数が経過した昔ながらの立派な(大きな)建物をある土地
・接道の義務を満たしていない再建築不可の土地で、非常に古い建物がある土地
などです。
共通して言えることは、一般的に需要がなく、売却したくてもできないことや、さらに管理費や修繕積立金や固定資産税などのランニングコストがかさむこと、売却する時に、諸経費の持ち出しがあることです。
分譲マンションの場合、
所有をしているだけで管理組合へ管理費・修繕積立金などを支払わなくてはいけません。
一般的には築年数が古くなればなるほど、修繕積立金は高額になっていくのですが、
毎月のコストの合計は専有面積70㎡前後で2万円から3万円程度かかります。
別荘地も同じです。
別荘地を管理する管理会社への管理費の支払いが年間で数万円かかります。
地価が低い地域にある土地建物の場合、建物の解体費用を土地の値段で賄いきれず、
売却時の諸経費を持ち出しで負担する必要が生じてしまいます。
そして、これは全ての不動産に言えることですが、
土地や建物を所有すると、市町村へ固定資産税を支払う義務が発生します。
負動産はお金を払って引き取ってもらうもの?
そのような負動産を手放すために、お金を払って不動産業者に引き取ってもらうという動きもあるようです。
新潟県内で有名なものにJR越後湯沢駅近くのリゾート分譲マンションがあります。
JR越後湯沢駅の周辺には、山の中だというのにおびただしい数の分譲マンションが建築されています。
私も霧がかかったような天気のときに湯沢近くを通過する高速道路を使ったことがあるのですが、森の中からたくさんのビルがニョキニョキ生えている光景は、幻想的で、なんだか不思議な光景でした。
そんな分譲マンションはバブルの頃に建てられたものが多く、「これからも不動産価格は上がり続ける」と信じた一部のお金持ちの方々が購入したようですが、現在では、ものによっては10万円でも売れないようです。
別荘のような贅沢品は一般の方には必要がないのに加えて、所有している間にかかる高額な管理費・修繕積立金などが、売れない主な理由のようです。
売却理由ですが、バブル期に購入した人から不動産を相続した人が売却するケースが多いようです。
お金持ちであれば、毎月の管理費などの出費も気にしなくて良いと思いますが、相続などで取得した人にとって、毎月の出費と固定資産税の負担はバカになりません。
毎月の管理費等が2万円、固定資産税が8万円だとしても、黙っているだけで年間30万円以上のお金が出て行くわけです。
たまったものではありません。
全く売れない状況の中で、それでもなんとか処分したい方が取った手段が、
お金を払って所有権を放棄するという方法です。
普通、ものを販売する場合、販売者がお金をもらうのが一般的です。
ですが、このケースでは、販売者がお金をもらうのではなく、お金をあげるのです。
お金をあげて、さらにものをあげるのですから、価格としてはマイナス価格です。
マイナス価格の相場は100万円弱が多いらしく、おそらく5~6年分程度のランニングコストと同額程度なのではないかと思っています。
不動産業者からすると、5年間の間に無事に手放すことが出来れば利益確定というわけです。
ただ、最近では越後湯沢のマンションも状況が変わってきているようです。
首都圏にお住いの年金受給者が移住目的で購入するケースが増えているようです。
現役時代に収めた年金次第では、首都圏の賃貸物件の高額な家賃は大きな負担になります。
ですが、越後湯沢のリゾートマンションは安価に購入することができ、管理費や修繕積立金の総額も、首都圏の賃料に比べると負担が少ないです。
そんな方が購入して移住するケースが多いらしいです。
近隣にはスーパーなどの商業施設がない地域もありますが、スーパーを運営している会社が送迎バスを定期的に運行しているらしく、生活の便も悪くないようです。至れり尽くせりですね。
負動産を手放すための方法とは?
私の住んでいる新潟市の近くでも、上記のような負動産は確かに存在します。
某市町村(名前はさすがに言えません・・)にある別荘地の不動産がそうです。
やはりバブルの頃に購入した人が圧倒的に多いようで、年をとって、行く機会もなくなったという理由で売りに出ていることが多いです。
所有者同士も同年代の人が多く、同じような理由で非常にたくさんの売り物件が出ています。
ですが、現代では需要自体がそもそもなく、管理費など余計な出費もかかることや、自宅としても生活の便が悪い立地であることから、さらに需要がないような状況です。
私自身は平成28年にこちらの別荘地にある売り家を売る手伝いをしましたが、運よく首都圏から地方への移住の希望を持ったお客さんがいらっしゃって、80万円で売却することができました。
これは本当に運が良かったなと思っています。
この人が現れてくれなかったら、今でも募集活動を行っているかもしれません。
負動産を処分する方法ですが、
売れる金額まで価格を落とし続ける、購入検討者にとって買いやすい条件をつける、
それ以外にはないのではないかと思っています。
その結果、マイナス価格になってしまうこともあるのですが・・・。
私がご相談いただいたケースを参考にお伝えすると、
・新潟市西蒲区内に所在する約110坪の土地
・土地上に母屋を含めて、4つの建物があり、全ての建物の保全状況が非常に悪い
・土地の価格は600万円前後に対して、建物の解体・家財処分費用が1000万円
という事例がありました。
建物の保全状況が非常に悪く、通常通りの売り方ですと、建物の解体費用を売主様で負担する売地としての販売になりますが、マイナス400万円になってしまうため、現況で購入してくれる人を探しました。
結果的には、
・売買価格1万円
・登記費用 売主負担(本来は買主が負担するものです)
という条件で成約し、売主様の持ち出しでの負担は仲介手数料を含めて約40万円でした。
当初予定していたマイナスが400万円だったため、負担を大きく軽減できた例です。
政令指定都市の新潟市内でも、条件次第では負動産化することも多く、上記の例以外でも、負動産を売却したことは私自身、少なからずあります。
どの例でも、売主様の負担は持ち出しで40万円前後でしたが、ご自身も普通の売却方法では売れないということを自覚しており、次の世代へ引き継ぎたくないということで、申し訳ないと思いながらも対応させていただきました。
負動産を手放す方法は売買以外にもあり、
次の世代が相続するタイミングで、相続を放棄するという形で処分することもできます。
そのためには、相続予定の不動産が「負動産」になりそうかどうかを、相続が発生する前に、事前に確認する必要があります。
金額を知るためには、率直な意見を言ってくれる不動産業者へ、どの程度の金額で売れるのか、また本当に買い手が付きそうなのかを、事前に相談しなければいけません。両親からすれば、失礼な行為にはなりますが・・・。
また、一部の財産のみ相続を放棄することはできないため、他の財産がどのような状況かを詳しく把握し、判断しなければいけません。
不動産が負動産かを考えるときに注意点がひとつあります。
それは、不動産の価値は決して主観で判断しないことです。
「負動産!!」とメディアが大きな声でアナウンスし続けていますが、ひとりで鵜呑みにしないほうが賢明です。
(私もそのメディアの中のひとりのような気がしてきました・・)
その声を聞いていると、地方の郊外に所在している土地や建物は、全て「負動産」のように感じてしまう人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
土地や建物を過大評価するのも困りますが、過小評価はもっと困ります。というか、もったいないです。
本人にとって価値がなくても、他の人にとってどうなのかは分かりません。
「こんなものを誰が買うんだ?」というものでも価値を見出す人がいます。
リサイクルショップで、ガラクタ同然の物が売っているのを見たことはありますよね?
不動産の世界でも同じことが起こるんです。
まずは、信頼できる専門家に率直な価値を聞くのが鉄則です。
市町村などへの負動産の寄付はできる?他の人に引き取ってもらう方法は?
寄付となるとタダで差し上げることです。
私にとって完全に専門外にはなってしまうのですが、寄付先によっては受け取ってくれる可能性もあるのではないかと思っています。
寄付先として、市町村・隣接地の所有者などがさまざま考えられると思いますが、隣接地の人はかなり有力な寄付先のような気がします。
市町村は利用できることを前提に寄付を受けるか判断します。
私の認識では、宅地の寄付を受ける市町村は存在しません。
市町村が寄付として受け付ける不動産は公衆用道路などの公共性のあるものだけです。
また、固定資産税は市町村にとっては大切な財源です。
市町村の財源のうち、固定資産税による税収は約40%を占めており、まさに稼ぎ頭です。
それを簡単に手放すことは考えづらいです。
ひとつひとつの不動産は市町村にとって、大切なお客さんというわけです。
隣接地の方への寄付は、いわゆる贈与に当たります。
贈与をする場合、贈与を受ける側(この場合だと隣接地の方)には、その不動産の評価額に応じて贈与税の支払い義務が生じます。
贈与性の計算には、「路線価」という価格を利用します。
相続財産のうち、不動産の評価をするときに使う数字なのですが、贈与の場合の評価額もこちらの路線価を利用します。
贈与をするときは、贈与の方法の中でも「暦年贈与」という方法を利用するのですが、こちらの贈与には年間110万円の基礎控除額があります。
つまり、評価額が110万円を下回る場合には贈与税はかかりません。
それ以上の評価額になると、上回った部分に対して一定の税率がかかります。
税率を下記に記載しますので、参考にご覧下さい。
課税価格(評価額-基礎控除額)税率控除額(万円)
200万円以下の場合 | 10% | - |
---|---|---|
200万円超300万円以下の場合 | 15% | 10 |
300万円超400万円以下の場合 | 20% | 25 |
400万円超600万円以下の場合 | 30% | 65 |
600万円超1000万円以下の場合 | 40% | 125 |
ざっとこのような感じです。
例えば、評価額400万円の不動産を引き取ってもらう場合の計算式は・・
{400万円-110万円(基礎控除)-10万円(控除)}×15%=42万円
こう見ると、贈与税だけでも結構な金額になります。
贈与税があまりにも高額になると、受け取る側も難色を示す可能性が高くなります。
そんなときには少額の売買契約というのも有効な手段になります。