今回は、測量の費用や内容について話をします。
ところで、普段の買い物で購入する商品について思い出してみて下さい。
食品にしても衣料にしても、検品され、きれいに包装されていたり、不完全な不良品のようなものが流通していることはないはずです。
あったとしても、まず誰も購入しませんよね?
これは不動産についても言えることです。
むしろ不動産は売ったり買ったりすることが、人生に1度あるかないかの世界のため、お客さんにとっての不安要素があると購入を判断していただくのがとても難しくなります。
商品として売るために、形を整えなければいけないのは不動産も同じです。
そして、不動産の状況によって本当にさまざまな費用が発生するのですが、今回は「確定測量・境界の復元のための費用」について説明します。
こちらの文章を読んでいただくことで、
- 確定測量・境界の復元とはなに?
- どんなときに確定測量(境界の復元)をする必要があるの?
- 測量(境界の復元)をする理由は?
- 境界トラブルにはどんなものがあるの?
- 測量(境界の復元)にはどのくらいの費用と時間がかかるの?
をご理解いただくことができます。
確定測量とは何?
確定測量は、土地の境界や広さ(地積)を確定するための作業です。
作業は、土地家屋調査士が行います。
市役所や法務局に保管されている資料や、周辺の状況を調査・測定し、隣の土地の所有者の立会いのもとで、境界の位置を確認し、境界を表わす印(境界標)を打ち込む作業です。
境界標は、こんな感じのものです。ご覧になったことがあるのではないでしょうか?
さらに境界標を打ち込み以外にも、「私の土地と隣の人の土地の境界はここで間違いありません」という内容の書類を取り交わして、将来的にトラブルがないように、書類を残します。
どんなときに確定測量をする必要があるの?
確定測量は全ての不動産でやらなければいけないものではありません。
ですが、売り家や売り地など、土地が関わる不動産の売却で、下記のケースの場合は確定測量や境界の復元が必須になります。
- 法務局に保管してある地積測量図の作製年月日が古い、そもそも地積測量図の保管がされていない。
- 土地の一部だけを分けて売却する。
- 境界標が現地にない。
このようなケースです。地積測量図とはこんな書類です。
こちらの地積測量図は平成31年に作製されたもので、詳細な情報が記載されています。
境界の位置や境界標の素材、測量する際の基準点(引照点)や座標などが、そうです。
ですが、時代によって地積測量図に求められた機能そのものが変化しており、古い年代に作製されたものだと、面積の座標値や基準点、境界標についての情報がないことも多いです。
また、以前は地積測量図の保管が義務ではなかったため、測量図そのものがない土地もあります。
そのような土地の場合には、現地に境界標があったとしても、正確な位置にあるかどうか何とも言えない状況です。確定測量が必ず必要になってきます。
では、いつごろ作成された地積測量図ならば問題ないかと言うと、
平成17年3月7日以降がひとつの目安になってきます。
平成17年3月7日に地積測量図の作成方法についての法律が厳格化され、測量の精度が増したことや、測量に利用した基準点の情報を測量図に明記しなければならなくなったからです。
これ以降に作製された測量図の場合、自然災害で土地の形状などがわからなくなっても、基準点を元にして、その土地や境界線が地球上のどこにあるかを特定することもできます。
また、土地の一部のみを売却する場合、土地を分ける必要がありますが、そのときに隣接地の所有者の境界についての合意書を法務局に提出する義務があり、結果的に確定測量が必要になります。
最後に、地積測量図が新しい(平成17年3月7日以降)に作製されているけれども、境界標が見当たらない場合は、基準点を参考にして地積測量図をもとに境界を復元することができます。
測量をする理由は?
測量をする理由は一言で言うと、「境界を明示して、トラブルを回避するため」です。
土地が絡む不動産売買では、「境界の明示」というものが必要になります。
売主さんから買主さんから行わなければいけないもので、契約書の契約条項にも記載されており、売買の必須の条件です。
境界の明示とは、隣接地との間の境界の位置を確認し、「境界はここです。」とお客さんに示すことです。
ここで言う境界とは、昔から設置されている境界標ではなく、おとなりさんの立会いのもとで、正確な位置が確定した境界標のことです。
境界がはっきりすることで、おとなりの土地からの越境物や、逆にこちらの土地からの越境物があるかどうか、はっきりします。
また、登記事項証明書に記録された面積と、実際の面積とのずれを確認することもできます。
境界トラブルにはどんなものがあるの?
事例の多い境界トラブルは「越境物があること」と「面積が減ってしまうこと」の2つです。
越境物とは?
「越境」とは境界を越えて他人のものがある状態です。
よくあるケースは、眼に見えないところだと地面に埋まっている上下水道管やガス管、
眼に見えるところだとブロック塀やコンクリートの塀などです。
隣の敷地とこちらの敷地の間にコンクリートの塀があって、境界標がないとします。
境界がわからない状況で、この塀をどちらが所有していて、塀がどちらの土地に建っているか、判断がつきますか?
ひょっとしたら塀は隣の人のものなのに、こちらの土地に越境して(はみ出して)作られているかもしれません。
この場合だと、
「塀はだれの持ち物なのか」
「塀に修理が必要になったときにお金の負担はどうなるのか」
「改めて塀を作るときはどうするのか」を、
あらかじめ決めて、買主さんと契約をしなければ、将来的にモメる原因になります。
高額な不動産という買い物だからこそ、お客さんにとっての不安要素を限りなくゼロにするために、商品としての形を整えていく感じです。
他にも、地面のなかの上下水道やガスの配管なども境界の位置によっては越境していることもあります。
極端な例ですが、私が経験したものだと、隣の家そのものが越境していたケースもあります。
このときには、土地の一部を切って隣の人に買ってもらいました。
一般的には越境物があった場合には、覚書などを取り交わして将来的な対応について、あらかじめ決めておくことが多いです。
面積が減ってしまうこととは?
購入した土地が事前に説明されていた面積よりもせまかったら、ガッカリしますよね?
坪単価が30万円の土地が1坪せまくなったら、その土地の資産価値は30万円分減ります。
法務局の記録が極端に古くない限り、1坪も面積がずれてしまうことは、あまりないのですが、坪単価が高い地域だと、せまくなったときのガッカリ感はなおさら強くなりますし、その分の金額の返金をお願いしたいという人もいらっしゃると思います。
法務局には登記事項証明書が保管されていて、その中には土地の地積(広さ)などを示す部分があります。
法務局に記録されている土地の面積を「公簿面積」と言い、測量した結果、公簿面積と実際の面積(実測面積と言います)がずれることは良くあります。
法務局というと、なんだか信頼できそうな感じがしますが、測量方法が未熟だった当時の面積は、あまり信用できるものではありません。
事前に確定測量や境界の復元を行うことで、越境物や面積のずれを確認しておくのが、ベストな売却方法です。
公簿売買と実測売買とは?
せっかく公簿面積と実測面積について説明をしましたので、公簿売買と実測売買のことも説明しておきます。
公簿売買とは、公簿面積を基に売買することで、実際の面積との間に誤差が生じた場合でも、大きくなった分や小さくなった分、お金を精算したりしない契約の種類です。
大きくなっても小さくなっても、売主・買主ともに恨みっこなしで契約します。
一方、実測売買は、公簿面積と実測面積の間に誤差が生じた場合には、大きくなった分や小さくなった分だけお金を精算しなおします。
新潟市内の不動産取引では、実測売買を行うことはあまりないのですが、新潟駅近くの天神や米山、万代、弁天、東大通、八千代などの地価が極めて高い地域の場合は、
実測売買を行うこともあります。
東京の土地は、ほぼ100%実測した面積をもとに売買するようです。
事前に平米当たりの土地単価を決めておいて、誤差の分だけ精算するような感じです。
新潟市では、一般的には測量をする場合でも、実測売買ではなく、公簿売買を行うことがほとんどです。
測量にはどのくらいの費用と時間がかかるの?
測量の費用は40坪から50坪くらいの平均的な広さの土地で、隣接地の所有者が4人くらいの場合で、25~30万円前後が相場です。
測量期間は平均的な広さの土地で、1ヵ月半から2ヶ月くらいかかります。
費用も期間も土地の広さで変わってきます。
広くなると、隣接地の所有者が増えたり、測る作業そのものが増えるからです。
相当の期間が必要になるため、売却活動を行いながら、測量も同時に進行してもらうことが一般的です。
「購入する人が決まってからやりたい」と希望する売主さんもいらっしゃいますが、できればお客さんが購入の判断をしやすいように、事前にやってもらいたいところです。
契約したあとで越境物などが発覚すると、お客さんにとってもマイナスイメージです。
また、買主さんとの条件面のすり合わせや、隣接地からの越境物の対応にも相当の時間がかかります。