今回は、不動産業者から提示される査定価格とは別に、金額の参考材料にできる「公示価格」という価格について説明しようと思います。
何となく聞いたことがある言葉かもしれません。
こちらの記事を読んでいただくと、下記のことについてご理解いただけます。
- 公示価格とは、なに?
- 不動産の「一物四価」とは、なに?
- 4つの価格の金額的な違いは?
- 公示価格から、おおよその市場価格を調べる方法とは?
公示価格とは、なに?
公示価格とは、国土交通省が毎年3月下旬に発表している、全国各地の土地の価格です。
一般的な土地取引の客観的な指標にするための価格で、適正な価格が形作られるように寄与する目的があります。
毎年1月1日時点における全国の特定地点(約26000地点)の1㎡当たりの価格を、1地点につき2名以上の不動産鑑定士が鑑定評価し、その評価をもとに国土交通省から発表されています。
「地価公示」とか、「公示地価」などと呼ばれたりすることもありますが、同じ意味です。
公示価格と似たような性質のものとして、基準地価というものがあります。
こちらの価格は、国土交通省(国)ではなく、都道府県が主導して評価した価格です。
言葉は違いますが、意味あいはほとんど同じです。
毎年4月ごろに、新聞などで、「全国の地価上昇」などの見出しをご覧になったことはありませんか?
ここでいう地価とは、公示価格のことを言っています。
ちなみに、全国で最も公示価格が高いのは、銀座4丁目の三越銀座の道路向かいにある山野楽器の地点で、1㎡当たり 4970万円、坪単価 1億6429万7520円です!
1坪の広さは、おおよそで畳2枚分です。
「起きて半畳、寝て1畳」なんて言いますが、起きているスペースを購入するだけでも、8000万円以上の金額がかかるなんて、驚きですよ。価格破壊ですよ、ホントに。
ちなみに、新潟市内で最も高額な公示価格(基準地価)の地点は、新潟駅の万代口の一番駅寄りのエリア、東大通で、1㎡当たり 54万円です。
坪単価は178万5123円です。
地方と首都圏では、不動産価格の格差がとんでもないことになっています。
不動産の「一物四価」とは、なに?
不動産の「一物四価」という言葉を聞いたことはありませんか?
不動産には4つの価格があり、そのことを表す言葉なのですが、上で説明をした「公示価格」と、それ以外に「固定資産税評価額」「相続税路線価」「実勢価格」を合わせて、不動産の「一物四価」と呼ばれています。
固定資産税評価額とは、固定資産税を計算する大元になる価格です。
毎年4月ごろに、市町村から固定資産税課税明細書がご自宅へ郵送されてきていると思いますが、この固定資産税は、固定資産税評価額に一定の税率をかけることで計算されています。
この価格は固定資産税を徴税する市町村が、公示価格などをベースに決めています。
また、「更地にすると、土地の固定資産税が最大で6倍になりますよ!」と以前にお伝えしましたが、この由来は、住宅がある土地の場合、固定資産税評価額が6分の1になることにあります。
その結果、固定資産税も安くなっているんですね。
相続税路線価は相続財産としての不動産を評価するときに利用する価格です。
私は、簡単に「路線価」と呼んでいます。
路線価は道路についている価格です。
私たちが普段、何気なく使っている道路ですが、路線価という価格がついています。
下の図のような感じです。こちらは、新潟駅の近くの天神・天神尾の路線価図です。
道路によって、価格は異なります。
「100E」と表示されている道路の価格は、100,000円/㎡で、千円単位で1㎡当たりの価格です。
この価格は、国税庁(国)が決めています。
あくまでも相続財産としての土地の価格を計算するための価格です。
所有している土地にくっついている道路の路線価に土地の面積を掛けることで、
相続財産としての土地の価格を計算し、相続税額を計算します。
実勢価格とは、実際に市場で販売した時の価格のことです。
土地の時価とも言えます。
売る人と買う人が契約に合意した価格のことで、実際に売れた価格です。
4つの価格の金額的な違いは?
このように、不動産には目的に応じて、4つの価格があります。
価格が高い順に並べると、
実勢価格 〉 公示価格 〉 相続税路線価 〉 固定資産税評価額
となります。(地域や土地面積によっては実勢価格 〈 公示価格 になることもあります。)
公示価格は、一般的な土地取引の客観的な指標として発表されている価格ですが、実勢価格は、あくまでも不動産市場での需要と供給で決まっており、必ずしも 公示価格 = 実勢価格 というわけではありません。
むしろ、公示価格 = 実勢価格 の式が完全に成立する地域なんて、ほとんどないと思います。
売却をする土地が所在する地域によっては、 実勢価格 〉 公示価格 になったり、逆に、実勢価格 〈 公示価格 になったりすることもあります。
どんな土地の場合に 実勢価格 〉 公示価格 になるかというと、需要 〉 供給 になっている地域、つまり、購入希望者にとって人気のある地域です。
逆に、実勢価格 〈 公示価格 になる地域は、需要 〈 供給 になっている地域で、購入希望者に人気のない地域になります。
人気がないなんて申し訳ない表現なのですが、現在の若い世代が住宅を購入したい地域は、下のような地域です。
・前面道路の幅が6mの地域(比較的新しい時期に開発がされた地域とも言えます)
・道路がごちゃごちゃしていない地域にある土地
つまり、道路がすっきりとした景観の地域を求める人が多いです。
他にも、小学校や商業施設が近くにあるなど、利便性が高い地域を求める傾向はありますが、車移動が当たり前になっている世代にとっては、そこまで重要な要素ではないような気がします。
新潟市内でも、古くから宅地として開発された地域では、道路の幅が4mであったり、そもそも車が進入できないような道路沿いにある宅地もあります。
このような地域では、公示価格 〉 実勢価格 になることが多いです。
ただ、あくまでも、購入希望者はそのような土地を求める傾向が強いですが、経済的な事情は人それぞれで、6m幅の道路沿いの土地が欲しくても購入できない人もおり、4m道路の土地に全く需要がないというわけではありません。
そのあたりは、ご安心いただいて問題ありません。
公示価格からおおよその市場価格を計算する方法とは?
それでは、公示価格からおおよその市場価格を計算する方法を説明します。
正確には、公示価格と相続税路線価を利用して計算します。
具体的には、公示価格の地点の、公示価格と相続税路線価のバランスを参考に、ご自身が所有している土地の路線価から逆算して、公示価格相当の価格を求めます。
公示価格は全国の特定の地点に付いている価格で、全ての地点に付いているわけではありません。
自分で所有している土地が、公示価格の地点になっている人なんてほとんどいません。
その反面、相続税路線価は、ほとんど全ての道路に付いています。
新潟市内では、北区・南区・西蒲区以外の市街化区域内のほとんど全ての道路に路線価が付いています。
(北区・南区・西蒲区に土地をお持ちの方、すみません・・。)
その路線価をもとに公示価格と似たような価格を計算できます。
手順は2つです。
- 公示価格は、同じ地点の路線価の何倍か、調べる。
- 所有している土地の路線価を上記で求めた倍数で乗じて、公示価格に近い金額を計算する
具体的に調べてみましょう。
まず、所有している土地の近くで、公示価格(基準地価)の地点を探します。
国土交通省の「不動産情報ライブラリー」というサイトで調べます。
以前に取引事例を調べる方法を説明しましたが、同じサイトです。
次のようなサイトです。
ページの真ん中下に、地下の情報をご覧になりたい方へという文字があり、
その下に「データの検索」というボタンがあります。
こちらをクリックします。
今回は、参考に、新潟市中央区米山2丁目6番地2のおおよその市場価格を調べてみます。
弊社の事業所の所在地です。
米山内には2つの公示価格設定地があり、ひとつは弁天線沿い、もうひとつは笹出線沿いです。
弊社は笹出線沿いのため、笹出線沿いの公示価格設定地を採用します。
以下です。
米山2-6-2 の近くの公示価格の地点は、「新潟中央5-15」 で、価格は304,000円/㎡です。
まずは、参考にすべき公示価格がわかりました。
次に公示価格の地点の路線価を調べて、公示価格と路線価のバランスを確認します。
相続税路線価は国税庁の「路線価図・評価倍率表」というサイトで調べます。
次のようなサイトです。
地図上で新潟県の部分をクリックすると、下のようなページに飛びます。
路線価図という文字をクリックします。
次は、調べたい市町村名をクリックします。
そうすると、地名がずらっと、表示されます。
今回は「中央区」をクリックし、さらに「米山3」をクリックします。
クリックすると、路線価図が表示されます。
地図上で「公」と表示されているところが公示価格の地点です。
公示価格は304,000円でしたが、路線価は225,000円です。(角地ですが、補正は今回、省略します。)
(同じ地点なのに、金額が違うことに違和感を持つ人もいらっしゃるかもしれないですね。)
公示価格は路線価の1.35111倍です。(304,000 ÷ 225,000 = 1.35111・・・)
この倍数を、調べたい土地の路線価に掛けることで、その地点の公示価格に近い価格を確認できます。
調べたい地点の路線価は155,000円です。
155,000円 × 1.35111 = 209,422円 です。
調べたい地点の公示価格相当額は 209,422円/㎡ です。
坪単価に直すと、209,422円 × 3.30578 = 692,303円/坪 となります。(1坪は約3.30578㎡ です)
この金額をさらに1.1掛けして、おおよその市場価格(実勢価格)を確認します。
(実際には相違があることも多いですが、公示価格の1.1掛けがおおよその市場価格と言われています。)
692,303円 × 1.1 = 761,534円 になります。
私の相場感では、実際にはもう少し高く売れるかと思いますが、そこまで大きく相違はないかと思います。
長々と説明してきました、何となくでもご理解いただけましたでしょうか?
手間としては、そこそこかかりますが、実際に売却するときの価格をイメージしやすくなるとは思います。
最終的には、不動産業者へ査定依頼をすることにはなると思いますが、ご興味がありましたら、ぜひ試してみてください。