今回は不動産の査定価格について話をしたいと思います。
不動産を売却するときに、売主さんにとっての一番の関心は「いくらで売れるか」だと思います。
売却を依頼する前に、まず不動産屋に査定依頼をすることが一般的な流れです。
最近だと、インターネットにいわゆる「査定サイト」というサイトがありますが、1つのサイトに情報を登録するだけで、複数の不動産業者が査定金額を提示してくれる便利なサイトです。
査定金額を複数の不動産業者へ確認することは誰もがしますし、いろいろな人の意見を聞いて、それを反映させた上で売却を始めることは、とても良いことだと思います。
ですが、この査定価格を聞くときに注意をしなければいけないことがあります。
その辺りも含めて、査定価格について説明したいと思います。
こちらの記事を読んでいただくと・・・、
- 査定価格とは何か?
- なぜ不動産会社によって査定価格のばらつきがあるのか?
- 査定価格がおおきくばらついたときの対策とは?
以上のことについてご理解をいただけます。
査定価格とは何か?
まず、始めにお伝えしたいのは、「査定価格は未来の時点で成約が予想される金額」だということです。
査定をした不動産会社は、その金額での成約を保証しているわけではなく、査定価格が実際の成約価格を下回ったとしても、その差額分を保証してくれるわけではありません。
売れなくても不動産会社は何も補填してくれないわけですから、最終的な売り出し価格は売主さん自身が決めたほうが良いです。
複数もらった査定書の金額は、あくまでも売り出し価格を決めるための目安として参考にしましょう。
「売り出し価格は売主さんが決めましょう」なんて、人によっては無責任にも聞こえてしまうことをなぜ言うかというと、それには理由があります。
なぜ不動産会社によって査定価格のばらつきがあるのか?
査定依頼をしたことがある方なら経験はあると思いますが、不動産会社によって、査定価格に若干のばらつきがあります。
なぜ、ばらつくかと言うと、理由は3つあります。
1. 比べている取引事例が違う
2. 担当者の実績などの過去の経験値や、感覚などの主観的な部分が違う
3. 媒介依頼をもらうために、わざと高い価格を提示している
以上の3つです。
1と2については、なんとなくイメージできると思います。
問題は3です。3の理由があるからこそ、売主さんには、自分の不動産の価値を自分で見極めてもらい、売り出し価格を自分の意志で決めてもらいたいのです。
ひとまず、1と2です。
以前も説明しましたが、査定方法には3つの種類があり、それぞれ「取引事例比較法」・「原価法」・「収益還元法」という方法です。
売却する不動産の種類によって査定方法は変わりますが、一般的な売地・中古の売家やマンションを査定するときには、取引事例比較法を利用します。
取引事例比較法は言葉通り、過去に取引された事例を基に査定する方法です。
できるだけ条件が近い不動産の取引事例を集めて、査定価格を算出します。
私の場合は、できるだけ厳密に査定をするために、
・土地の場合は、「同じ学校区」・「同じような道路状況(道路幅や種類や間口の方角)」・「同じような面積」、
・マンションの場合は、同じ建物内の別の部屋で、専有面積が似たような部屋、
の取引事例で比較をして、査定価格を導きます。
例えば、4m幅の道路に接している土地と、6m幅の道路に接している土地を比べることは、ほぼありません。
ですが、査定をする担当者によっては、取引事例の情報を収集するのが、あまり上手でなかったり、大雑把な条件で取引事例を比較していることもあります。
そうすると、自然に査定価格にもばらつきが出ます。
また、同じ会社の社内の人間でも、人が変われば査定価格も変わります。
これは過去の売買についての経験値や、感覚などの主観的な部分が違うからです。
問題は3.です。
不動産の売却はほとんどの人にとって、一生に一度の経験です。
不動産取引の経験がない、ほとんどの売主さんは「査定価格どおりに不動産が売却できる」と考えがちです。
そして、ほとんどの方は一番高い金額を査定してくれた不動産業者へ専任で売却依頼をする傾向があります。
その心理を利用するかのように、他の不動産会社よりも圧倒的に高い査定価格を提示する不動産会社があります。
わざとやるんです。正確には会社単位というよりも営業担当者単位で行っています。
売主さんから媒介依頼をもらうために、高額な査定金額を提示しているのです。
本当にその金額で売れれば、売主さんの満足度は非常に高いものになります。
ですが、実際に売れることはほとんどありません。
こういうわざと高い金額提示をする担当者には行動パターンがあります。
売却の依頼をしてから数ヶ月経ったころに、「お客様からの反響が悪いから価格を下げましょう」など、理由を付けることで成約できる価格まで下げさせるというのが、お決まりのパターンです。
もともとの査定価格が高すぎるわけですから、売れるわけがありません。
それを分かってやっているのですから、非常に悪質です。
査定価格が大きくばらついたときの対策とは?
査定価格のばらつきに振り回されないためには、どうしたら良いでしょう?
いろいろ考えてみたのですが、1番良い方法は「とりあえず一番高い価格で募集をしてみる」という結論に至りました。
本来は適正価格を事前に調べる方法が良いのでしょうが、限られた時間の中で、限られた情報を基に調べても、時間が過ぎていくだけで終わると思います。
それであれば、売れるかは分からないけれども、ひとまず行動に移すのが一番かなと思います。
また、売る側で必死に調べたとしても、実際にそれを買うのはお客さんです。
「高いのか、それとも安いのか」はお客さんが判断するものです。
お客さんがいない場所で「ああでもない、こうでもない」と悩んでも、ひとりよがりなもので終わってしまいます。
それなら直接、お客さん(市場)に「これを買いますか?」と聞いてみるのが一番の早道ではないかと思います。
この方法が一番良いとは思うのですが、2つ注意点もあります。
- 「一番高い査定価格を提示した不動産会社に専任で売却依頼をしないこと」
- 「価格を見極める期間を事前に決めておくこと」
以上の2つです。
特に、2つ目は重要かなと思います。
私の経験で言うと、大体2週間くらいの広告期間で、ほとんど全てのお客さんに情報が伝わります。
価格が適正に近ければ、この2週間の間に一定の数のお問い合わせをいただけます。
ですが、価格が大きくずれていると、全くと言って良いほど、お問い合わせがありません。
不思議なもので、お客さんに不動産の相場についての知識がなくても、人によって、「高い」「安い」の感覚がずれることは、ほとんどありません。
同じものを見れば、みんながみんな、「高い」と思ったり、「安い」と思ったりしています。
人間って根っこの部分で、何かしら繋がっているんだなとつくづく思います。
お問い合わせがないということは、お客さんから無言で、「高い」と言われているのと同じです。
逆にお問い合わせがバンバン来ているときは、お客さんから「これ、安いね!」って言われているのと同じです。
売主さんによっては、問い合わせが全くない状況でも高い金額設定のまま、粘る人もいらっしゃいますが、今までの経験上、粘っても購入する人が現れることは、ほとんどありません。
2週間の間にお問い合わせがほとんどなかった場合は、すっぱりとあきらめて価格を見直したほうが賢明です。
また、お問い合わせは数件あったけれども、購入の申込がない場合ももちろんあります。
この状況は、お客さんからすると、「購入するのに踏み切れない要素がある」状況です。
例えば、「思っていたより道路がせまい」とか、「実際行ってみたら、イメージと違った」とか、「間口の部分に電柱があって、それが気になる」とか、「もう少し安ければ」とか、そんな理由です。
大体のお客さんは金額的な理由で購入に踏み切れていません。
そして、金額が下がるのを待っているお客さんもいます。
金額的な理由の場合は、売主さんとお客さんのどちらが先に折れるかの話になります。
どんな商取引でもそうですが、売る人からすれば、少しでも高く売りたいと思いますし、買う人からすれば、少しでも安く買いたいと思うのが、人間です。
そのような思惑の中で、合意に至った状態が「契約」です。
不動産業者の仲介は、そのような状況を取りまとめる仕事でもあります。
いずれにしても「2週間」という期間は、かなり重要な期間だと思っています。
価格を見直して再募集するときも、「2週間」という期間を意識しながら、お客さんからのお問い合わせの数を確認して下さい。
最終的に買いたい人が現れた金額が、そのときの適正価格です。
まとめ
今回は、査定価格について説明しました。
どの業界でも同じだと思いますが、不動産屋も本当にいろいろな人がいます。
何かの縁でお会いするのは間違いないですが、会った人がどんな人なのかは一見して分かりません。
振り回されないようにご自身でリスク分散するのも、必要かなと思います。
一応、私の査定について話をすると、媒介契約期間の3ヶ月間で売れると思う金額を提示します。
もちろん高額で売却するための方法について提案はしますが、過度に期待をさせて、がっかりさせてしまうのも申し訳ないと感じてしまいますので、根拠が薄い金額はお渡ししないようにしています。