今回は、空き家の管理について説明をしていきます。
まず、空き家を管理する目的についておさらいですが、
・不動産としての資産価値を維持する
・近隣とのトラブルを事前に回避する
・損害賠償責任を負う危険を回避する
・固定資産税などの経済的な負担を最低限に抑える
大きく分けると、この4つです。
今回は、前回の続きで、
「損害賠償責任を負う危険を回避する」と、
「固定資産税などの経済的な負担を最低限に抑える」を説明します。
こちらの記事を読んでいただくと、
- 損害賠償責任を負う危険を回避する管理方法とは?
- 所有者責任を負わないために確認するポイントとは?
- 空き家に火災保険をかけるべき?
- 固定資産税などの経済的な負担を最低限に抑える管理方法とは?
- 電気・ガス・水道の契約はしておいたほうが良い?
以上のことについてご理解をいただけます。
損害賠償請求を負う危険を回避する管理方法とは?
建物の外壁や雨どい、コンクリート塀が破損・落下し、第3者に傷を負わせて場合、この責任は誰にあると思いますか?
誰も住んでいないのだから、誰も悪くないような気もしますが、実は違います。
厳しいですが、この責任は所有者の方にあります。
このことは民法の717条で規定されていて、所有者責任(工作物責任)と呼ばれます。
この民法717条の条文をそのまま転載すると、
「土地の工作物の設置、または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、
その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。
ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、
所有者がその損害を賠償しなければならない」
とあります。
この責任の特徴は、所有者が善意無過失でも、責任を負わなければいけないことです。
つまり、「忙しくて、空き家の様子をしばらく確認できておらず、建物の状況が悪いことを知らなくても、所有者に責任がある」という規定です。
最悪の事態にならないように、空き家がどのような状況なのか確認して、事前にトラブルを回避する必要があります。
「危険な箇所はないか」「事故につながりそうな箇所はないか」をしっかりと把握し、必要な修繕をすることで、危険を回避することができます。
所有者(工作物)責任を負わないために確認するポイントとは?
では、どのような部分を確認すればよいでしょうか?
基本的には、建物の外回りになりますが、下記の部分を確認してください。
・屋根
・外壁
・雨どい
・門・塀
・テレビアンテナ
屋根
屋根には、瓦・トタン・スレートがあります。
瓦の場合は、ずれている部分がないか、欠けている部分がないか、確認します。
トタンの場合は、めくれがないか確認します。
スレートの場合は、ひび割れや反りがないか確認します。
ただ、確認するといっても、屋根の上に上るのは、危険です。
できれば、少し離れたところから双眼鏡などで確認してください。
また、屋根は釘などで固定しています。釘も経年劣化すれば、錆びます。
固定している金物が錆びれば、屋根材がずれたり、めくれたりすることは、どうしても起こってしまいます。
30年くらい屋根の葺き替え工事をやっていない場合は、修繕することをお勧めします。
外壁
外壁には、モルタル壁・タイル壁・トタン壁があります。
こちらも屋根と同じような確認方法で、眼で見て確認します。
モルタル壁
モルタル壁は、下地の板にセメント+砂+水を練り合わせたモルタルを吹き付けた壁です。
耐久性は高いですが、耐水性が低いのが特徴で、昔(1970年代)に流行したらしいです。
経年すると、下地とモルタルが剥離して、膨らんだり、ひび割れたり、最悪の場合には落下したりします。
タイル壁
タイル壁は、分譲マンションなどの外壁に利用されている壁材です。
まれに一般の住宅でも利用されています。
接着剤を使って、下地に貼り付けるのですが、経年で接着剤が剥離し、タイルが落下することがあります。
トタン壁
トタン壁は、最近だとガルバリウム鋼板が有名ですが、屋根材としても利用されているものです。
こちらも屋根のときと同じように、固定している釘などが劣化すると、めくれの原因になります。
雨どい
雨どいが外れていないか、雨どいを固定している金物が外れていないか、確認します。
外れていると、落下や外壁からの雨漏りの原因にもなります。
門・塀
こちらも門柱などの腐食、コンクリートブロックのひび割れがないかどうか、確認します。
特に、塀は敷地の内と外の境界近くにあるものです。
劣化している塀は、地震などで倒壊する危険があり、通行人に怪我を負わせてしまう可能性も高くなります。
費用はかかりますが、程度が悪ければ修繕をするか、撤去することをお勧めします。
テレビアンテナ
まれに、屋根の上のテレビアンテナが倒れている住宅を見ることがあります。
本体の劣化と台風や暴風雨の影響だと思うのですが、鉄のかたまりが道路などに落下するのを想像すると、恐怖しかありません。
アンテナをしばらく利用する機会がないようでしたら、撤去したほうが安心です。
毎年、台風が来るたびに心配になるのも、何だか嫌ですよね。
また、アンテナとは別になりますが、敷地内に風で飛ばされてしまうようなものは放置しないようにしましょう。
空き家に火災保険をかけるべき?
損害賠償責任の危険性について一通り説明をさせていただきましたが、関連するものとして、火災保険について説明しようと思います。
まず、私の考えとしては長期で空き家にする可能性がある場合、火災保険には加入したほうが良いと思っています。
理由は、所有者(工作物)責任のリスクを回避するためです。
ただし、下記の2つのポイントに注意が必要です。
・実際に居住している人がいる住宅の火災保険よりも割高であること(2倍位します)
・空き家の保全状況によっては、保険会社から加入自体を断られるケースがあること
以上の2つです。
保険会社も事業として保険商品を売っています。
そのため、保全状況が悪い空き家の引き受けを断ることがあります。
固定資産税などの経済的負担を最低限に抑えられる管理方法とは?
以前の情報紙でも話題にしましたが、2015年から「空家等対策の推進に関する特別措置法」という法律が施行されました。
適切に管理されておらず、周囲に著しい悪影響を及ぼしている空き家を「特定空き家」に指定し、土地の固定資産税の優遇措置を解除したり、改善されない場合には、行政代執行で行政が解体撤去し、費用を所有者へ請求することもできる法律です。
土地の固定資産税の優遇措置が解除されると、土地の固定資産税が最大で6倍になることもあり、空き家を所有されている方にとって負担が大きくなる制度とも言えます。
ただし、適切な管理を行っていれば、特定空き家に指定されることもありません。
法律で定義されている特定空き家の状態ですが、
- そのまま放置すれば、倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
です。どんな空き家なのかは、なんとなく想像は付くのではないかと思います。
今までに説明をしてきた管理方法のいくつかを実践していただければ問題はないかと思いますが、適切な管理を行うことで、固定資産税などの費用負担を軽減することもできます。
電気・ガス・水道の契約はしておいたほうが良い?
空き家の所有者さんから今後の活用についてご相談をいただくと、かなりの割合で電気と水道の契約をしている方がいらっしゃいます。
私の考え方ですが、
- 将来的にご自身か、ご親族が活用する予定があったり、賃貸する場合は、電気と水道の契約をしたほうが良い
- 数年以内に売却予定がある方で、建物の築年が昭和56年5月31日以前で、3000万円控除を利用できる場合は、無理に電気と水道の契約をしなくても良い
と考えています。
将来的に活用する場合は、通水や室内の換気・清掃などの管理が必須です。
月に1回か2回の管理の作業で、公共料金は1月3,000円くらいかかるかと思いますが、管理不良で設備に不具合があった場合の費用負担を考えると、水道料金と電気料金の負担は、必要経費として考えたほうが良いと思います。
ただし、近い将来に売却するかもしれない場合は、無理に契約をしなくても良いと思います。
特に3000万円控除を利用できる条件が整っている住宅の場合は、建物を解体したほうがお手元にお金を多く残せますし、取り壊す予定の建物のために、毎月の公共料金を負担するのは大きな負担になってしまいます。
家財の整理が終わったら、電気・水道の契約を切ってしまっても、将来的に問題はないのではないでしょうか。