空き家の今後の利用方法を決めかねていて、しばらくは空き家のままで管理しようと思っている方もいらっしゃると思います。
また、親族間での取り決めで数年間は処分できない方や、将来的には自分が住んだり、親族に住んでもらいたいという方もいらっしゃいます。
そんな方へ向けて、今回から2回に分けて、空き家の管理方法について説明させていただきます。
空き家の管理は手間のかかるものです。
また、間違った方法で管理をしてしまうと第3者に迷惑をかけてしまうこともあります。
空き家を管理する目的別に、管理方法と、管理しないことによって起こってしまうリスクについて、項目ごとに詳しく説明していきたいと思います。
こちらの記事を読んでいただくとご理解いただけることは、
- 不動産としての資産価値を維持する管理方法とは?
- 近隣とのトラブルを事前に回避する方法とは?
以上のことについてご理解をいただけます。
まず、空き家を管理する目的は、
・不動産としての資産価値を維持する
・近隣とのトラブルを事前に回避する
・損害賠償責任を負う危険を回避する
・固定資産税などの経済的な負担を最低限に抑える
大きく分けると、この4つです。
今回は、「不動産としての資産価値を維持する」と「近隣とのトラブルを事前に回避する」を説明します。
不動産としての資産価値を維持する管理方法とは?
「今は首都圏に住んでいるけど、将来的には実家に戻ってのんびり生活したい」
「将来的には、子供などの親族に住んでもらいたい」
このようなご希望をお持ちの方は、将来的にも住めるように、住宅の資産価値を維持する必要があります。
建物は人が住まなくなると、急速に劣化します。
誰も住んでいないと、給排水の設備を使うことも、窓を開けて換気することもなくなってしまうことが原因です。
また、屋根や外壁などから水漏れがあると、構造上の主要部分が傷み、住むことができなくなったり、
リフォームに多額のお金がかかってしまうことにもなります。
定期的に空き家へ行ってメンテナンスをすることで、劣化の進行を遅らせることができますが、
下記の部分にご注意をいただいて、メンテナンスしてください。
・通気・換気
・給湯器の凍結防止
・悪臭予防のための汲み取りや排水口の処理
・畳の湿気予防
・建物の外回りの設備の確認
・庭の管理
通気・換気
通気や換気をしないと、結露などによる湿気で建物が傷んだり、室内に湿気が貯まって、カビが生えたり、シロアリが発生したりすることがあります。
結露の原因は、主に「室内外の寒暖差」と「室内の湿度」です。
季節によって、寒暖差と湿度が違いますので、換気の方法も違います。
夏場だと、昼間は高温・多湿のため、できれば気温が下がる夜間に、冬場だと、天気の良い日中に換気・通気をしたほうが良いです。
また、換気には換気扇を使う方法もあります。
電気の契約を残したままにしておいて、換気扇を付けっぱなしにする方法です。
ですが、換気扇で連続換気する方法は、雨の日に湿度を室内に取り込むことになります。
新潟のような雨の日が多い地域では、逆に結露ができやすい環境を作ってしまうことになりますので、できれば止めたほうがいいです。
室内から湿気を追い出すようなイメージで換気をしてください。
給湯器の凍結防止
給湯器は、水をお湯に変える機械です。どの住宅でも設置されています。
室外に付いているタイプと、室内についているタイプの2つがあるのですが、室外に付いているタイプの場合、冬場に給湯器が凍結しないように対応する必要があります。
凍結で破損すると、配管の修理には数万円、本体をまるごと交換すると20万円前後かかり、費用がバカにならないからです。
凍結を防止する方法は2つあり、
- 電気契約をして、給湯器本体の凍結防止機能を利用する
- 給湯器本体の配管の水抜きをする
どちらかの方法を使います。
凍結防止機能を利用する
現在の給湯器の多くには凍結予防ヒーター機能と自動ポンプ運転機能が付いています。
気温が下がると、自動的に作動して本体や配管の凍結を防止してくれます。
ただし、電気の契約をしなければいけないことと、追い炊き機能がついている場合は浴槽の循環金具より5cm程度以上、水をためておく必要があります。
給湯器本体の水抜きをする
給湯器内の水を抜き、凍結しないようにする方法です。
電気契約が不要になることがメリットです。
手順ですが、給湯器本体側と、浴槽側でそれぞれ操作が必要です。
下記にネットから拝借した画像を転載します。水抜きのときの参考にしてください。
給湯器側
1. 給湯器のリモコンの運転スイッチを切って、ガス栓(1)、給水の元栓(4)を閉める
2. 建物内の給湯栓(5)(キッチンや洗面台も含む)を全て開ける
3. 給湯器の給水水抜き栓(6)、給湯水抜き栓(7)(8)を開ける
※これで給湯器とつながった給水管の中の水が、全て外に出ることになります。
浴槽側
1. 浴槽の水を排水する
2. リモコンの運転スイッチを入れて、「おいだき」のスイッチを押す。(浴槽の循環金具から水かお湯が出ていることを確認)
3. ②で水かお湯が出切ったあと、運転スイッチを切る
4. 給湯器のふろ往水抜き栓(2)・ふろ戻水抜き栓(3)、ポンプ水抜き栓(9)、ふろ水抜き栓(11)を開ける。
5. 中和器水抜き(10)を開けて完全に排水する
6. 給湯器の電源プラグを抜く
給湯器によっては水抜きの方法も違うかもしれません。
できれば取扱説明書をご覧いただくか、メーカーまでご確認ください。
有料にはなりますが、北陸ガスなどの業者でも対応してくれます。
給湯器側の水抜き方法
浴槽側の水抜き方法
悪臭予防のための汲み取りや排水口の処理
トイレやキッチンの排水に浄化槽や汲み取りを利用している住宅の場合には、室内に悪臭が充満することを予防するために、汲み取りをしてもらいます。
浄化槽の場合は他にも注意点があります。
浄化槽は槽内にバクテリアを培養することで汚水を浄化する仕組みで、ブロアーという装置で浄化槽に酸素を供給することで、バクテリアが死なないようにしています。
浄化槽を利用している住宅の電気の契約を解約してしまうと、ブロアーから酸素が供給されなくなり、浄化槽の中のバクテリアが死んでしまいます。
しばらく住宅を利用しないのであれば、バクテリアが死んでしまうことを承知の上、電気を解約する方法もあります。
そんなときは、新たに活用するタイミングでバクテリアを入れなおします。
ただ費用もかかりますので、電気契約を継続するか、ご自身でご判断をいただければと思います。
また、排水口の処理ですが、
トイレやキッチンの排水トラップの水が蒸発しづらくなるような工夫が必要です。
排水トラップとは、水廻りの排水配管の一部に水をためて、臭気などが室内に上がってくることを防ぐための構造のことです。
トイレの便器に水がたまっているのも、排水トラップの一種です。
排水の配管は、下水道と直接つながっているため、遮断してあげないと、下水道から悪臭やガス、虫などが室内に侵入してきてしまいます。
そのような状況にならないように、排管の途中に水をためるスペースがあり、水で排管にふたをしています。
排水トラップの水ですが、空き家にしておくと蒸発してなくなってしまいます。
水がなくなると、お伝えしたように、悪臭や虫などが室内に侵入します。
できれば一定の頻度で水を流すことで、排水トラップの水がなくならないようにしてもらいたいところです。
ですが、遠方にお住まいの方にとっては、大変な作業だと思います。
そんな方は、水が蒸発しづらいように、排水口部分にラップをしましょう。
こちらは浴室の排水口にラップをした写真ですが、トイレやキッチンにもラップをすることをお勧めします。
畳の湿気予防
湿気予防のために、畳は上げましょう。
マイナスドライバーを畳と畳の隙間に当て、下まで押し込み、てこの原理を利用して押し上げます。
指が入る程度まで押し上げることができたら、あとは指を入れ込み、手で畳を上げることができます。
可能でしたら、天日干しをしてから室内の日当たりが良さそうなところに立てかけて保管しましょう。
建物の外回りの設備の確認
詳細な確認方法については、次回に送付する情報紙の「損害賠償を負う危険を回避する」で説明しました。
次回の送付になりますが、そちらをご覧ください。
屋根・外壁・雨どい・門や塀の状況を確認します。
雨漏りや塀の倒壊の可能性がある箇所については修繕をお勧めします。
庭の管理
庭の草木が伸び放題だと、景観が悪くなるのはもちろんなのですが、近隣に多大な迷惑をかけるケースがあります。
木の枝が塀を越えて隣の住宅や道路にはみ出し、落ち葉がお隣の土地や道路、側溝などに落ちたままになるケースです。
落ち葉は住宅の雨どいを詰まらせるなど、雨漏りや建物を劣化させる原因にもなります。
側溝では、その地域の雨水が処理されているため、側溝の一部に詰まりがあると、流れが遮断されてしまい、町内全体に迷惑をかけることになってしまいます。
また、樹木によっては、幼虫などの害虫が発生することもあります。
さらに、庭に放置された枝などの木材にシロアリが住み着き、建物に移動することで建物を傷めてしまうこともあります。
庭に猫などの糞尿が放置され、異臭が発生するケースもあります。
庭の管理をするときには、
・樹木の枝がお隣や道路にはみだしていないか?
・雨どいや側溝に落ち葉が詰まっていないか?
・庭に木材などが放置されていないか?
・猫や他の動物の糞尿や、異臭はしないか?
このようなポイントを押さえつつ、管理をすることが必要です。
遠方の方で、「頻繁には来れないけれども、費用もあまりかけたくない」という方は、シルバー人材センターなどを利用すると、民間の業者に依頼するよりも安く済ませることができます。
ただし、作業方法や期待している結果などは詳細に指示をしたほうがベターです。
職人さんは意外とざっくりしている人が多いですから・・・。
近隣とのトラブルを事前に回避する方法とは?
空き家の近隣にお住まいの方は、町内に空き家があることを皆さん承知しています。
そして、意外と気にしています。
「○○さんの家、どうするんだろうね?」とか、「もうしばらく空き家だね」とか、世間話の話題にもされているようです。
また、売却のご依頼を受けて近隣の方に挨拶をすると、「前から少し気になっていた」というご近所さんも多い印象です。
噂話にされる程度であればトラブルになることもないのですが、実際に迷惑に感じているご近所さんもいらっしゃいます。
例えば、
- 空き家の庭木がお隣さんの敷地内に侵入し、とても不快
- 庭木が前面道路に大きくはみ出していて通行しづらい
- 樹木の枯れ葉が雨どいを詰まらせていて、とても迷惑
- 腐朽した建材が敷地外まで飛び散り、危ない
- コンクリート塀が老朽化していて、倒壊しないか不安
- 敷地内から動物の糞尿などが原因の悪臭がして、洗濯物を外に干せない
- 強風が吹くと、テレビアンテナが揺れて、危険を感じる
などの不満をお持ちの方もいらっしゃいます。
このような近隣の方の不満は、実際に売却をするときに噴出することがあります。
売却の挨拶に行ったときに不満を爆発されることもありますし、測量をするときの境界立会いを拒否されるケースもあります。
「今まで我慢して、こちらで対応していた」というのが、ご近所の方の本音なのだと思います。
このように、近隣住民との関係が悪くならないように、最低限の管理をしなければいけません。
基本的な方法は、資産価値を維持する方法と同じなのですが、特に建物の外回りを重点的に管理してください。
上記の庭の管理などを参考にして、近隣の方へ最低限の配慮をしましょう。
また、何かあったときにご連絡をいただけるように、近隣の方への挨拶は必ずしたほうが良いです。
そのときに自宅か携帯電話の番号と、自宅の住所は伝えるようにしましょう。
今回は、不動産の資産価値を維持するための管理方法と、ご近所さんとの関係が悪化しないための管理方法をお伝えしました。
管理するときの参考にしてみてください。