では、どうすれば客観的な価値(いわゆる相場)を知ることができるでしょうか?
「売る場合」と「貸す場合」の2つのケースを順番に見ていきます。
まずは、売却するときの相場の調べ方です。
取引事例比較法とは?
相場を調べるときに重要なのは「周辺で、似たような条件の不動産が過去にどのくらいの金額で取引されているか」を確認することです。
不動産業者が利用する「取引事例比較法」という査定方法をマネする感じです。
取引事例比較法とは、不動産業者が査定で最も利用する査定方法です。
土地・中古の売り家・マンションなど、どの種類の不動産を査定する場合でも使われています。過去に似たような条件の不動産がどのくらいの金額で取引されているかを調べることで、おおよその価格を予想する方法です。
似たような条件というのは、
・ 場所
・ 築年数(建物がある場合)
・ 面積
・ 前の道路の幅
・ 前の道路の種類や接道長さ(公道か私道・道路と接している部分の距離)
・ 間口の方角(南向きがやはり人気です)
・ 売却の時期(できるだけ最近のものが良いです)
などです。
相場を知るために使ったほうが良い不動産情報ライブラリー
そこで相場を知るために、皆さんに使ってもらいたいサイトが2つあります。
・ 不動産情報ライブラリ
・ スーモ(もしくは、アットホーム)
この2つです。
まずは「不動産情報ライブラリー」についての説明です。このサイトは、国土交通省が運営しているサイトです。不動産の取引価格や地価公示・都道府県地価調査についての情報を検索・閲覧できます。
「安定的な不動産投資の促進、不動産市場の活性化、安心・安全な不動産取引」を目的に運用されているサイトで、国が運用しており、信憑性も高い情報になっています。
取引事例比較法では、売却したい不動産と似たような条件を比較しますが、こちらのサイトにはそれらの最低限の情報が掲載されています。
このサイトを使う最大のメリットは、公表されている情報が「実際に成約した金額」であることです。実際に売りに出したときに売れる可能性が高い、信憑性の高い金額だと思ってください。
ただし、デメリットとしては、細かい住所までは表示がないため、ピンポイントでどこにある不動産かわかりません。特に、分譲マンションの取引事例を調べるときには、一苦労必要です。なぜかというと、マンションの建物名が全く書いていないからです。
マンションの取引事例を調べる場合には、掲載されているマンションの築年数の情報から、ご自身の所有されているマンションと同じマンションの情報なのかどうか、情報を精査する必要があります。
不動産ライブラリーの使い方
「売り地・売り家の場合」と「分譲マンションの場合」のそれぞれを説明します。
■ 売り地・売り家の取引事例の調べ方
まずは、売り地・売り家の場合です。
「不動産情報ライブラリー」のトップページから「不動産価格の情報をご覧になりたい方へ」→「データの検索・ダウンロード」をクリック。
次に「地域」「物件の種類」「時期」を選んで「一覧表示」をクリックします。
すると、下のようなページになります。
参考のために「新潟市西区小針」の取引事例を検索しました。
例えば「新潟市西区小針の165㎡(約50坪)」で「6m幅で間口が南側の私道に面している土地」が、どのくらいの金額で売却できるか確認するとします。
このケースの場合、一覧を見た感じだと、なんとなく土地総額1400万円の前後に成約価格がありそうということがわかります。
■ 分譲マンションの取引事例の調べ方
次は、分譲マンションの場合です。
売り地・売り家と同じように、まずは「不動産情報ライブラリー」で「不動産価格の情報をご覧になりたい方へ」→「データの検索・ダウンロード」をクリック。
次に、「地域」「物件の種類」「取引の時期」を選んで検索します。
参考のために、新潟市中央区万代周辺の取引事例を掲載しました。
さきほどもお伝えしましたが、不動産ライブラリーではマンションごとの取引事例を調べることができず、取引事例の一覧にも建物名の表示がされません。
そのため、築年数の情報を頼りに、調べたいマンションかどうか、当たりをつける必要があります。
「マンションの築年数がわからない……」という人もいらっしゃると思います。そんな人でもインターネットを使えば、簡単に建物の築年数を調べることができます。便利な世の中ですね。
例えば、新潟市中央区万代の「ダイアパレスシアース万代」の築年数を調べたいときは、ヤフーやグーグルなど検索エンジンで「シアース万代」と検索すれば、そのマンションについての何かしらの情報が掲載されています。
次のページをご覧ください。
これはスーモというサイトの「物件ライブラリー」の情報です。
このように、分譲マンションの築年数についての情報は、ネット上で調べることができます。ご参考ください。
さきほどの取引事例の一覧に戻って「ダイアパレスシアース万代」の取引事例がどれなのか探す場合は、建築年が1995年(平成7年)の取引事例を探すような要領です。
相場を確認するときの注意点
金額の相場を把握する際に、2つの注意点があります。
・ 条件が違うものと比べないようにすること。
・ 坪単価ではなく、総額を意識して金額を確認すること。
こちらの2つです。
■ なぜ条件が異なる不動産を比べてはいけないのか?
条件がぜんぜん違う不動産と比べても、全く参考になりません。
土地の前面道路の幅や種類、マンションや売り家の築年数は、不動産の価格にとても大きく影響しているからです。
例えば、4m幅の道路は、6m幅の道路に比べると需要が下がる傾向があります。
街並みが窮屈な印象になることや、車の通行がしづらいことが理由です。
必ず似ている条件の取引事例と比べるようにしましょう。
■ なぜ総額を意識して金額を確認したほうが良いのか?
土地の場合は特に、坪単価ベースだけではなく、総額ベースで考えることも重要です。土地の価格というと「坪いくら」のような感じで話をすることが多いのではないでしょうか?「坪単価×面積」で、総額を計算する人のほうが多いように見受けられます。
ですが、この計算はあまり良い計算方法ではありません。なぜかというと、地域によって、お客さんが土地にかけられる予算は、おおよそ決まっているからです。
さきほどの新潟市西区小針の取引事例の一覧をパッと見た感じ、この地域の住宅用地の取引総額は、最大でも1700万円前後です。
この金額は、この地域で住宅を購入する人が土地にかけられる予算をそのまま表しています。この予算が「総額の相場」ということになります。
そんな理由から、仮に大きな土地であったとしても、「総額の相場」からかけ離れすぎた土地は「坪単価×面積」の単純計算の総額で売れる可能性が低いということになります。
例えば、周辺に、50坪の面積、総額1500万円(坪30万円)の土地の取引事例があるとします。同じ地域にある100坪の土地が、100坪×30万円=3000万円で売れると思いますか?
地域性や間口の長さによっては可能性もありますが、かなり微妙なところです。
一部の地域を除いては、3000万円での売却は難しいでしょう。
(一部の地域と言ったのは、高額所得者が多く住んでいるような地域では、総額の相場がないことが多いからです。総額が「坪単価×面積」で青天井で伸び続けます)
このように、坪単価は総額を面積で割ったときのひとつの指標です。
大きな土地つきの住宅を相続した人は、坪単価のみに着目して「坪単価×面積」で総額を計算しないようにしましょう。期待していたよりも安い金額で売ることになってがっかりしてしまいますよ。
さらに、マンションの場合には、取引事例の情報に、部屋番号や、階数、開口部の方角が書いていないことも留意した上で、金額を確認する必要があります。
マンションにお住まいの方ならご存知のように、マンションは部屋の階数、中部屋・角部屋、日当たりによって、金額にかなりのばらつきが出ます。
さきほどのシアース万代のいくつかの取引事例でも、かなりの金額のばらつきが見られましたが、それ相当に部屋の条件が違うのだと予想できます。
以上の注意点を参考にしながら、おおよその金額を把握してください。
正確な金額ではなく、おおよその金額で大丈夫です。
購入するお客さんがいない時点で正確な金額について議論しても正解は出ないからです。微調整は後からいくらでもできます。